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2008年11月24日(月) 18時23分

映画「羅生門」デジタル復活 傷やノイズ消え29日公開産経新聞

 ベネチア国際映画祭グランプリに輝いた黒澤明監督の名作「羅生門」(昭和25年)の原版フィルムが、初の日米共同による研究チームによってデジタル復元された。約40人のスタッフが半年がかりで、計12万コマ以上のフィルムを一つ一つ修復。映像の傷やぶれ、音声のノイズをかつてないレベルでよみがえらせた。監修を務めた東京国立近代美術館フィルムセンター、栩木(とちぎ)章主任研究員は「歴史的一歩となる試みで、過去の名作の復元の可能性が広がった」と話している。(戸津井康之)

【写真】差は一目瞭然…「羅生門」同シーンの修復前の映像

 復元プロジェクトは、黒澤監督が亡くなって今年で10年を迎えるのを機に、映画の版権を持つ角川映画が昨年夏に立ち上げた。チームは、角川文化振興財団のほか、フィルムを保存している東京国立近代美術館フィルムセンター、米映画芸術科学アカデミーなど日米スタッフで組織した。

 今回修復したフィルムは46年前から同センターで保存していたが、原版から焼き直す際、ピントがずれたまま焼き付けられた部分が残るなど、保存状態は良くなかった。

 作業は、デジタル修復技術の第一人者で、高い技術を持つ米映画芸術科学アカデミーのフィルム・アーカイブディレクター、マイケル・ポゴゼルスキーさんらが中心となって進めた。

 「傷を修正する米国のコンピューターソフトは高い精度で進化している。ただ、『羅生門』の場合、雨のシーンが多く、コンピューターでは傷かどうか判断できず、技術者が一コマごとを手作業で修正する部分が多かった」(栩木さん)

 さらに、音の復元も課題は多かった。映像の傷と同じくソフトを使い雑音を取り除いていくが、「セミの鳴き声を米国人は雑音かどうか判断できなかった。日米スタッフの協力が不可欠だった」という。

 「羅生門」でスクリプターとして現場デビューし、数々の黒澤作品に携わった野上照代さんは「撮影時にこだわったのが黒、白、そして灰色のコントラスト。二度とよみがえらないとあきらめていた鮮明さが再現され、復元技術の高さに驚きました。『七人の侍』など全黒澤作品を修復してほしい」と期待を込めた。

 「羅生門 デジタル完全版」は29日から東京・角川シネマ新宿で公開される。

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