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2008年11月23日(日) 00時00分

《2》捜査機関 立証にも工夫読売新聞

裁判員制度へのPRを掲げ、準備を進める富山地検(22日、富山市で)

 裁判員の正面を向き、書面を見ずに言葉を句切りながら、はっきりと語りかける。重要な争点は一つひとつ丁寧に挙げ、分かりやすく示す。富山地検の検事たちは、裁判員による裁判を想定したリハーサルや勉強会を重ねている。

 特に分かりやすさが求められるのは、裁判の冒頭で、被告が罪を犯すまでの過程や証拠によって明らかにする事実を述べる「冒頭陳述」。さらに、証人尋問や証拠調べなど一連の手続き終了後、処罰に対する意見を述べる「論告求刑」だ。

 刑事裁判には法律の専門用語が多く、公判でも検事が早口で読み上げるケースが多い。これを、読み方だけでなく、表現も分かりやすく改めている。

 たとえば、「殺意を持って」は、「死んでもかまわない」「殺そうと思って」と言い換える。「手拳で殴打」は「殴りつけた」——など。

 犯罪事実を裏付ける証拠の提示や証人も、公判前整理手続きにより、有罪を立証するのに必要なものに極力絞り込む方針だ。一方、殺人事件の現場や凶器などショッキングな証拠の提示も、一般の裁判員に提示する必要もある。

 地検の新倉明検事正は「裁判官なら十分に理解できたものが、裁判員の人は、ほかの証人の話も聞きたいと思うかもしれない。限られた証拠で立証するには、検察の信頼も問われる」と話した。

      ◎

 警察庁の「取り調べ適正化指針」に基づき、県警が進める捜査改革は、裁判員制度開始時期と重なる。取り調べのあり方の変化が、裁判で提出される証拠にも影響を与えそうだ。

 8月には、県内各署の取調室に透視鏡を設けるなどの試験運用を始めた。県警科学捜査研究所は3月、DNA鑑定室を3倍に広げ、能力を向上させた。否認事件などで証拠として重要性が増すDNA鑑定の効果的な運用を目指すためだ。

 県警捜査関係者らの制度開始への反応は様々だ。ある捜査員は、「調書に残すのは必要な部分だけ。捜査に大きな影響はないはずだ」と話す。一方、別の捜査員は、「取り調べで、少し強い聞き方をしただけで、裁判で『強引だ』と批判される恐れもある。より注意が必要になる」と話した。

 事件の捜査にあたる検察や警察。裁判員制度の開始を前に、犯罪事実を十分に立証できるように着々と準備を進めている。

http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/toyama/feature/toyama1227279936308_02/news/20081123-OYT8T00087.htm