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2008年11月23日(日) 23時03分

中国に翻弄される日本 APECで二転三転の日中首脳会談産経新聞

 アジア太平洋経済協力会議(APEC)で22日、急遽(きゆうきよ)、日中首脳会談が行われた。わずかな時間で世界金融危機対策などで意見交換しただけだったが、舞台裏には、首脳会談開催を巡り、中国に翻弄(ほんろう)される日本の姿があった。日中関係はやはり「中国主導」で動いているのか。後味の悪い首脳会談となった。(リマ 佐々木類)

 ■実現した会談

 「いやー、胡錦濤(国家主席)との会談が、一番大変だったよ」

 麻生首相は22日夜(日本時間23日昼)に急遽(きゆうきよ)開催された日中首脳会談の後、本音とも冗談ともつかぬ「意味深」な言い方ながら、笑顔で周辺にこう声をかけた。

 首脳会談が最終的に決まったのは、各国首脳が集まった22日の夕食会の席上だった。夕食会が終わると、両首脳は同じ会場の片隅に移動して「即席」の首脳会談を演じた。

 時間はわずか20分。世界的な金融危機克服のために金融システムの改革に取り組むなどを確認。さらに、国際通貨基金(IMF)の資金力増強のため、日本が最大1000億ドル(約10兆円)の融資を表明したことに関し、麻生首相が「中国のような外貨準備を多く保有している国の参加を歓迎したい」と中国側に発言を促したが、胡主席から直接の返事はなかった。

 ■壊れた「あうん」 

 当初、APECでの日中首脳会談は予定されなかった。10月のアジア欧州会議(ASEM)出席で麻生首相が北京を訪れ胡主席と会談をしており、12月13日にも福岡・太宰府で日中韓首脳会談があることから「無理に会わなくてもよい」(外務省筋)とのコンセンサスがあった。

 ところが中国側は突然、首脳会談を打診してきた。麻生首相がAPECに向け離日する直前の20日昼。日本側は中国側の真意を測りかねながらも会談準備に追われた。

 麻生首相を乗せた政府専用機がペルーに向かう途中も慌ただしかった。

 給油で立ち寄った米・ロサンゼルス国際空港。2階のVIPルームに、佐々江賢一郎外務審議官、斎木昭隆アジア大洋州局長、垂秀夫中国・モンゴル課長が駆け込み対応を協議した。

 だが、ペルーに到着すると状況はまた一変する。中国側から「キャンセル」の連絡が入ったのだ。

 中国側の要請にもかかわらず「中国は自分たちの都合で日程を二転三転させた」(首相同行筋)。日本側もいらだった。

 そして22日夜、ペルーのガルシア大統領主催の夕食会の席上で再び、首脳会談開催で合意した。

 ■迷う中国

 二転三転した理由の一つを外務省筋は「日本が金融サミットで出したような世界金融への対応策を、日本から求められることを嫌ったのではないか」と推測する。

 金融サミットでは麻生首相が、1000億ドル融資の構想を打ち上げたが、胡主席は途上国向け融資の条件緩和などを先進国に求めたにすぎず、方向性を打ち出せなかった。

 日本側にも中国のわがままに追従せざるを得ない背景があった。外貨準備高、米国債保有高で世界第1位の中国を金融危機対策に取り込もうと、ドタキャンされても辛抱強く首脳会談を受けた。

 ただ、これが「中国主導の日中関係」を印象付ける結果になった。

 外務省幹部は日米中の3カ国の関係について「日米は世界で最も緊密な同盟関係。だが米中は『敵でも友人でもない。競争相手』(オバマ米次期大統領)の関係だ」と三角形に例えて説明する。

 だが、首脳会談をめぐるドタバタから見えるのは、いびつな三角形だ。

 10月下旬。北京を訪問した首相は胡氏にこう言い放った。「友好は手段であって目的ではない。目的は日中両国の共益だ」。事前に用意されていなかった麻生首相の発言に「胡主席は黙ってうなずいていた」(同行筋)というのだが…。

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