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2008年11月23日(日) 20時50分

【元厚生次官ら連続殺傷】腹いせ、逆恨み…行政へ向けられる理不尽な刃産経新聞

 平成10、11年に松尾邦弘最高検検事(当時)と但木敬一法務省官房長(同)宅にナイフなどが送りつけられた。通信傍受法に反対する勢力との犯行との見方が浮上したが、実際に容疑者を捕まえてみれば、司法試験に落ちた男による腹いせの犯行だった。

 元厚生次官らの連続殺傷事件では「年金のプロ」といわれた官僚トップ経験者が相次いで標的となったことなどから、警察当局もテロの可能性を視野に入れたが、容疑者の逮捕によって、法務・検察当局の幹部が狙われたのと同じように、事件は違った展開を見せ始めている。

 捜査関係者は「行政対象暴力は、逆恨みからくる身勝手な犯行も多く、犯罪は陰湿化する傾向にある」と指摘する。小泉容疑者が供述であげた「保健所」は、都道府県や政令市などが設置しており、厚労省は設置主体ではない。

 警察庁の統計によると、昨年、全国の警察に寄せられた行政対象暴力の相談件数は2536件で、統計が残る7年以降で最多となった。14年以降は、2000件を超える状況が続いている。

 昨年4月、長崎市の伊藤一長市長(当時)が銃撃され死亡した事件は暴力団関係者による犯行だったが、暴力団などの反社会勢力が資金獲得の手段としているケースも目立ち、組織のトップや幹部職員が凶悪事件に巻き込まれることも多い。

 13年秋、廃棄物収集運搬の許可をめぐる逆恨みから殺害された栃木県鹿沼市の環境対策部参事、小佐々守さん=当時(57)=の妻、洌子(きよこ)さんは、「身勝手な自己主張を繰り返す犯人が多いが、どんな理由であろうと、人の命を奪う行為を許してはいけない」と、行政対象暴力に対し、社会全体が毅然(きぜん)とした態度で臨むべきと訴えている。

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