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2008年11月23日(日) 02時30分

<裁判員制度>地裁の8割、宿泊想定…到達時間、20倍の差毎日新聞

 来年5月施行の裁判員制度を実施する全国60地裁・支部のうち約8割の49カ所で、宿泊が必要な裁判員が生まれる可能性の高いことが、毎日新聞のアンケートで分かった。管内の裁判員候補者が裁判所に到着するのに最も長くかかる時間(推定)について、宿泊の必要性が低い「3時間未満」と答えたのは11カ所だった。最高裁は裁判員裁判の7割が3日以内で終わるとしているが、多くの地域で想定以上に拘束される裁判員が出そうだ。

 裁判員制度施行半年前の準備状況を聞くため、10月下旬、郵送でアンケート。今月中旬までに60地裁・支部から文書回答を得たうえで、追加取材した。

 「最長到達時間」への回答で、最長は小笠原諸島の住民を想定した東京地裁の「1日半程度」。最短はさいたま地裁の「1時間50分程度」で、その差は約20倍に達した。長野地裁と同地裁松本支部、宮崎地裁の3カ所は未試算だが、いずれも「宿泊が必要な可能性がある」とした。

 裁判員の選任手続きは通常午前9時〜9時半ごろ始まるとみられ、間に合わなかったり、裁判終了後に当日中の帰宅が困難な時は宿泊が認められる。宿泊料は実費でなく、地域によって7800円か8700円が支払われる。裁判所への移動は公共交通機関の利用が原則で、鉄道、船、飛行機は利用分の運賃、バスやタクシーの場合は1キロ当たり37円が支給される。

 最長到達時間が3時間以上の地域は交通アクセスが不便なケースが多く、宿泊になる可能性が高い。「3時間程度」とした高松地裁は、船便のダイヤの関係で始発便に乗っても開始時刻に間に合わない離島が出ると予想。「3〜4時間程度」の佐賀地裁も「離島については、ほとんどの場合、宿泊が認められる」と推測する。離島以外でも「3時間程度」とした富山地裁は「駅までの距離や鉄道ダイヤの関係で、宿泊の必要性がある人が出そうだ」と話している。

 前日から泊まる必要があると、裁判が3日で終わっても、拘束は事実上4日間になる。最高裁は「辞退を認めるかは各裁判所の判断。ただ、管内に居住する場合、法令は遠隔地というだけでは辞退理由として認めていない」としている。【玉木達也、川辺康広】

◇地裁別最長到達推定時間◇

※カッコは支部名

札幌   約3時間45分

函館   約7時間

旭川   10時間程度

釧路   約6時間

青森   4時間〜4時間半程度

盛岡   3〜4時間程度

仙台   4時間以上

秋田   3時間程度

山形   約5時間

福島   約3時間

(郡山) 約5時間

水戸   4時間前後

宇都宮  2時間〜2時間半程度

前橋   約2時間半

さいたま 1時間50分程度

千葉   約2時間10分

東京   1日半程度

(八王子)3時間程度

横浜   2時間半程度

(小田原)2時間程度

新潟   3時間35分

富山   3時間程度

金沢   3時間程度

福井   3時間半程度

甲府   4時間程度

長野   調査を検討中

(松本) 調査を検討中

岐阜   4時間以上

静岡   4時間前後

(沼津) 4時間前後

(浜松) 4時間前後

名古屋  2時間半程度

(岡崎) 約3時間

津    3時間以上

大津   2時間程度

京都   4〜5時間程度

大阪   2時間程度

(堺)  2時間以内

神戸   3時間以上

(姫路) 約3時間

奈良   4時間半〜5時間

和歌山  5時間程度

鳥取   約4時間

松江   約4時間40分

岡山   2〜3時間程度

広島   4時間程度

山口   5時間程度

徳島   3時間半程度

高松   3時間程度

松山   3時間以上

高知   約5時間40分

福岡   3時間程度

(小倉) 2時間半程度

佐賀   3〜4時間程度

長崎   7時間程度

熊本   4時間以上

大分   4時間以上

宮崎   調査中

鹿児島  約13時間半

那覇   6時間程度

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