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2008年11月22日(土) 03時00分

相次ぐ悪質死亡ひき逃げ、なぜ車に引き込まれてしまうのか読売新聞

 大阪府内で、被害者が長距離引きずられる悪質な死亡ひき逃げ事件が相次いだ。

 加害車両から衝突されたはずの被害者が、なぜ、はね飛ばされず車に引き込まれてしまうのだろうか。

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 大阪市北区の交差点で先月、会社員男性(30)が車にはねられた上、約3キロ引きずられて死亡した。大阪府警によると、衝突時は低速だったとみられ、死因は引きずられたことによる外傷性ショックだった。直後に救護されれば助かった可能性もあり、府警はホストの男(22)を殺人容疑などで逮捕。衝突後、車の下に巻き込まれた男性のスーツなどが車底部に引っかかり、はずれなくなったとみている。

 大阪府富田林市の国道で今月16日、新聞販売店アルバイトの少年(16)が軽ワゴン車に6キロ以上引きずられ死亡した事件でも、遺体の状況から、体が引っかかっていたのは車底部の可能性が高い。

 多くの交通事故を検証してきた元科学警察研究所付属鑑定所長の上山勝さん(64)によると、高速で衝突すると被害者ははねとばされるが、比較的低速の場合、被害者が車底部に巻き込まれ、ギア装置に引っかかることがあるという。車底部は、エンジンから動力を車軸に伝えるギア装置が大きく張り出しているためだ。

 さらに、〈1〉車高が低い〈2〉被害者があおむけの状態〈3〉路面の状態がいい〈4〉厚手の衣服−−などの条件が重なると、長距離引きずられることになるという。

 低速で衝突したひき逃げ事件では、塗膜片やガラス片などの遺留物も残りにくく、一般的に捜査が難しいとされる。警察庁によると、昨年検挙されたひき逃げ事件のうち、塗膜片とガラス片が端緒となったのは31件で、1998年の61件から半減した。

 新たに捜査の主流になってきたのが防犯カメラやDNA鑑定などの科学捜査だ。昨年、これらが端緒となって解決した事件は513件で、98年から100件近く伸びている。

 防犯カメラの設置が増え、解析技術も進み、警視庁交通捜査課は「車両の一部が一瞬でも映っていれば特定できる」と胸を張る。10月5日に東京都小金井市で起きた死亡ひき逃げ事件では、有力な目撃証言や遺留物はなかったが、防犯カメラからミニバンが浮上。同車種の持ち主を1人ずつ調べ、容疑者を逮捕した。

 今年1〜9月の全国の死亡ひき逃げ事件の検挙率は87%だが、東京、大阪などは100%という。警察庁幹部は「捜査手法は進歩しており、さらに検挙率を上げる」と話している。(関俊一)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081122-00000007-yom-soci