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2008年11月22日(土) 01時32分

【元厚生次官ら連続殺傷】2つの現場を結ぶ「黒い車」産経新聞

 元厚生次官ら連続殺傷事件で、夫婦が殺害されたさいたま市の山口剛彦さん(66)宅と、妻が刺された東京都中野区の吉原健二さん(76)宅を結びつけるキーワードに「黒っぽい車」の存在が浮上した。山口さん宅周辺では警察犬が約500メートル離れた駐車場で臭気を失って追跡をやめたことが新たに判明。犯人が下見や逃走に車を利用した疑いが強まったとして、埼玉県警と警視庁は自動車ナンバー自動読取装置(Nシステム)を活用し、2つの現場周辺を同じ車が通過していないか、洗い出しを始めた。

 埼玉県警によると、山口さん宅の敷地を出て右方向に約50メートル、突き当たりの路地を左に曲がって約10メートルにわたって血の付いた足跡が残っていた。警察犬は血痕が途切れた地点からJR武蔵浦和駅方向にさらに約400メートル向かい、JR埼京線の高架下近くの駐車場手前で止まったという。

 山口さん夫妻の携帯電話の最後の発着信履歴が17日午後5時51分で、自宅のダイニングテーブルに食事が並び、山口さんの胃の残留物がほぼないことなどから、犯行時間は夕食前の17日夕とみられる。

 山口さん宅周辺で黒っぽい車が目撃されたのは、犯行時間に近い午後4時ごろ。血痕が続く路地にエンジンを掛けずに武蔵浦和駅方向を向いて止まっていた。誰も乗っていなかったという。

 また、犯行前の14日と16日夜、山口さん宅から武蔵浦和駅と逆方向に約300メートル離れた駐車場に、30歳ぐらいで身長160〜165センチの野球帽をかぶった男が立っているのを近所の主婦(59)が見かけた。

 吉原さんの妻、靖子さん(72)が警視庁の聴取に「30〜40歳ぐらいで、身長約165センチ。野球帽か作業帽をかぶり、作業着の上下姿だった」と説明した犯人の特徴に酷似していることから、埼玉県警は犯人が広範囲に入念な下見をしていた可能性もあるとみている。

 一方、吉原さん宅周辺で見つかった血の付いた足跡は、敷地を出て右約10メートル先の十字路を右に曲がった一方通行路を約70メートル進んだ場所で途切れていた。警視庁の警察犬もほぼ同じ地点で犯人の臭気をたどることができなくなったという。

 靖子さん襲撃の7時間前の18日午前11時半ごろ、近くの自営業の女性(48)が足跡が途切れた場所から約70メートル先で黒っぽいワゴン車がエンジンを掛けずに左側に止まっていたのを目撃。運転席には犯人の男に特徴が近い、濃い色の野球帽をかぶった30歳前後の男が座っていた。ワゴン車の横を走ってきた車に道をふさがれて立ち止まったため、印象に残っているという。

 山口さん宅と吉原さん宅は直線距離約15キロで、犯行時間が丸一日ずれているため、どのような手段でも移動は可能とみられるが、埼玉県警と警視庁は車で逃走したとの見方を重視。複数の不審車の情報を精査し、山口さん宅に近い国道17号や吉原さん宅近くの新青梅街道など幹線道路沿いのNシステムで2つの現場に共通する車が記録されていないか、確認を急いでいる。

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