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2008年11月22日(土) 23時45分

血の付いた複数のナイフ、出頭の男所持…元次官宅襲撃読売新聞

 元厚生省次官宅への襲撃事件を巡り、「元次官を刺した」と話す男が22日夜、警視庁に出頭した。

 埼玉と東京で、2人の元次官宅が相次いで襲われた今回の事件は、元次官がいずれも年金行政のエキスパートだったこと、犯人が宅配業者に変装し、いずれも夕刻を狙ったと思われることなど、共通点が多い。男は出頭時に血の付いたナイフを複数持っており、事態は緊迫化した。

 千代田区霞が関の警視庁正面玄関前では、午後9時35分ごろ、男が車を乗り付けた際、警備の警察官から通報を受けたパトカーなど10台以上の緊急車両がサイレンをけたたましく鳴らし、続々と集結。週末の深夜で静まりかえっていた官庁街は、一瞬にして騒然とした雰囲気に包まれた。

 乗り付けた軽乗用車のレンタカーの周囲では、鑑識課員が写真撮影をしたり、車内の鑑識活動をしたりした。数十人の当直職員らも慌ただしく規制線を張るなど走り回っていた。

 その後、男の身柄は警視庁麹町署に移されたが、同署には険しい表情を浮かべた警視庁刑事部の幹部が、足早に入った。同署玄関には報道陣が一斉に詰めかけ、署内は一時、緊迫した状態となった。

 次官経験者を狙った凶行に、不安を募らせていた厚生労働省のOBや幹部からは、男の出頭に戸惑う声が上がった。

 辻哲夫・前厚労次官は、たまたまつけていたテレビで、男の出頭のニュースを見たという。「まだコメントするような心境にない。本当に犯人かどうか分からないので、もう少しよく見守りたい」と困惑気味で、「本当に不可解な事件なので、誰かが出頭したから良かったという話でもない」とも語った。

 殺害された山口剛彦元次官(66)の年金局時代の部下だった厚労省幹部は「本当に犯人かどうか分からないので、何とも言えない。(男が名乗っている)コイズミツヨシという名前にも、全く聞き覚えがない」と話した。

 一方、山口さんの妻美知子さん(61)の書道講師で親しくしていた埼玉県蕨市の尾崎玉枝さん(61)は、「一連の事件は悪夢のようだった。もし、出頭した男が容疑者ならホッとできます。現場に近付けず、線香をあげにも行けないでいる。事件を報告するためにも早く解決して欲しい」と話した。

http://www.yomiuri.co.jp/feature/20081118-5344510/news/20081122-OYT1T00821.htm