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2008年11月22日(土) 00時06分

ソマリア海賊、取り締まり難航させる謎と現状産経新聞

 アフリカ東部ケニア沖で、サウジアラビアの超大型石油タンカー「シリウス・スター」が海賊に乗っ取られた事件は22日で1週間となる。身代金をめぐる交渉も詳細は不明だ。各国は警備体制を強化したが、すべての海賊を取り締まるのは難しい。事件をめぐる現状と見通しをまとめた。

 ◆タンカーはどこに?

 乗っ取られた当初、タンカーはソマリア北部のエイルに向かったとされたが、海賊の仲間の1人は20日、ロイター通信に「シリウス・スター号」はソマリア中部のハラデレの東28キロにあるガーンという場所に係留され、仲間30人が乗り込んでいると語った。

 ただ、タンカーを保有するサウジ国営石油会社アラムコの子会社ヴェラ社はいまだに船の場所を発表していない。解放後に別の海賊に襲われるのを恐れ、情報を開示しないよう関係当局に要請しているという。

 ◆手数料まで高騰

 海賊側はシリウス・スターの解放の条件として、身代金2500万ドル(約24億円)を10日以内に支払うよう要求しているとされる。サウジのファイサル外相は、船会社が海賊側と交渉していることは認めたが、身代金額や交渉の内容などは明らかにしていない。

 海賊保険を扱う英国の保険会社幹部が、米ABC放送に語ったところでは、交渉は船主と海賊が直接行うのではなく、それぞれの代理人の間で行われるが、ソマリアの海賊との交渉が急増したため、代理人の手数料も高騰しているという。

 身代金交渉の専門家によると、交渉がまとまれば、身代金は現金で海賊に支払われることが多い。ただ、指定された海域に、梱包(こんぽう)した現金を落とすという一般的な支払い方法では別の海賊に奪われる可能性が高い。このため、ケニアには、身代金よりも高い手数料を取って、海賊の手元まで身代金を運ぶ専門業者も現れたという。

 ◆海上行動も制限

 インド海軍は18日、アデン湾で海賊の母船を交戦の末に撃沈した。インドは海賊の攻撃に対する正当防衛だと説明。海運関係者も、海賊に対する警告になったとインドの行動を評価している。ただ、海賊の襲撃から各国艦船を守るため、ソマリア沖に展開している各国海軍は、その行動を厳しく制限されている。拘束された乗員の安全確保を最優先とし、乗っ取られた船を強制的に停戦させて乗り込むことは、多くの国が認めていない。また、武器使用基準もバラバラで、統一行動を取るのは難しい。

 ◆地上作戦には及び腰

 ロシアのロゴージンNATO(北大西洋条約機構)大使は19日、海賊掃討のためにはソマリアでの地上作戦が必要と強調した。しかし、地上作戦を認める新たな国連決議ができても、実際に軍隊を派遣することには各国とも消極的だ。

 いまのところ、海賊が国際テロ組織アルカーイダとつながっている証拠はないが、米欧各国が介入すれば、一気に海賊をアルカーイダの側へ押しやることになりかねない、との懸念もある。(シンガポール 宮野弘之)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081122-00000501-san-int