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2008年11月21日(金) 02時11分

裁判員制度、明確でない辞退事由…「義務」と「仕事」板挟み産経新聞

 「国民の義務」か、それとも「医師としての責任」か。裁判員制度をめぐる救命救急センターへのアンケートからは、裁判員に選任されることへの不安と困惑が浮かび上がった。「多忙」を理由に裁判員の辞退が可能かどうかは明確な基準がないのが実情。医師に限らなくとも「義務」と「仕事」の板挟みになるケースは少なくないとみられ、裁判員制度の円滑なスタートには、不公平感のない選任手続きの整備が課題といえそうだ。

 アンケート調査の回答には、裁判員制度への不満を訴えるものが相次いだ。

 「医師が不在の場合、死者が発生する。医師不足の折、とうてい協力できるものではない」(大阪府三島救命救急センター)

 こうした回答の背景には、ぎりぎりの体制で患者の命と向き合う医師といえども、裁判員の辞退が認められるかどうかは不透明な現状がある。

 裁判員の選任にかかわる条件には、司法関係者や警察官、禁固以上の刑に処せられたことがある人など、裁判員になれない条件を定めた欠格事由・就職禁止事由と、辞退することのできる事情を定めた辞退事由がある。この辞退事由のなかでも問題となるのが、「自分で処理しないと著しい損害が生じるおそれのある重要な仕事」の解釈だ。

 最高裁は裁判官が辞退を認めるか否かを判断する指針とするため、昨年9月から今年1月にかけ、全国の762人を対象に調査を実施。茶摘み時期の京都府宇治市の茶農園主や株主総会時の会社経営者など、居住地や職種ごとに裁判員になる場合の障害として配慮すべき事情を例示した。

 しかし、これらはあくまで参考材料に過ぎず、最終的に辞退を認めるかの判断は各裁判官に委ねられている。救急医療に携わる医師でなくとも、受験生の子供を抱えた母親や決算期を控えた経理担当者など、千差万別の事情を公平に判断することが必要となる。

 一方、最高裁が今年に入って行った裁判員制度に関する意識調査でも、「義務であっても参加したくない」とする国民は4割近くを占める。こうした現状について、国立病院機構大阪医療センターは「裁判員の職務が優先業務として社会的に認知され、裁判員に選ばれたために生じる通常業務の遅滞がその人の不具合にならないことが、参加を促す要件になる」と提言している。

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