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2008年11月21日(金) 00時00分

職場での私的ネット利用の問題点読売新聞

 職場でのプライベートなパソコン利用を制限する企業が増えてきた。ウイルス感染や情報流出への対策だが、サイト閲覧を制限することが、仕事に悪影響を与える場合もあるようだ。職場でのネット利用についてのアンケートを見てみよう。(テクニカルライター・三上洋)

65%の人が仕事中に私的なウェブ閲覧

64.8%の人が「職場のパソコンから私的利用でネットを使っている」と答えている(ネットスター「第5回 職場でのインターネット利用実態調査」)

 インターネットでのフィルタリング大手・ネットスター社が、「職場でのインターネット利用実態調査」というアンケートを行っている。このアンケートを基に、ネットスター社の高橋大洋氏が「職場からのブログは禁止すべき?」という講演を行った(トレンドマイクロ「DIRECTION 2008」11月13日)。

 それによると、「職場においてプライベートな目的でウェブサイトを見ているか?」という質問に対して、65%の人が「私的に使っている」と答えている。また使っている人のうちの57%が「ほぼ毎日」と答えており、多くの人が仕事中でも会社のパソコンでウェブサイトをチェックしているようだ。

 この私的なウェブ閲覧の内容を集計したのが下のグラフで、「ニュース・天気予報・スポーツ(74.2%)」「プライベートな調べもの(71.4%)」などが多くなっている。また個人メールを読むための「ウェブメールの利用(34.6%)」や、仕事とまったく関係のない「ショッピング(17.7%)」「オークション(17.1%)」などもあった。


「職場でどのようなインターネットの私的利用をおこないますか?」という質問に対して、「ニュース・天気予報・スポーツ」「プライベートな調べもの」「ウェブメールの利用」などが上位に並んでいる(ネットスター「第5回 職場でのインターネット利用実態調査」)

 これに対して、企業のネット管理者側が心配していることを聞いたところ、

 「ウイルスやスパイウェアの侵入(73%)」

 「業務外のウェブ閲覧により、業務効率が低下(42.2%)」

 「個人情報や機密情報の漏えい(41.9%)」

などが上位になった。仕事時間にサボってネットを見ていることが一番の問題かと思ったが、それよりもウイルス侵入などを心配しているネット管理者が多いようだ。掲示板などの利用により、個人情報や機密情報の漏えい、企業の対外信用の低下を心配する管理者もいる。

掲示板やSNSを制限。業務に悪影響を与えることも

 そのため多くの企業は、フィルタリングソフトなどを企業のサーバーに導入してウェブアクセスを制限している。制限対象の書き込み型サイトをネット管理者に聞いたところ、「アダルト系のブログ(81%)」「2ちゃんねる(76.6%)」「mixi(55.2%)」「ポータルサイトの掲示板(39.6%)」などを制限していた。企業のネット管理者は、従業員が書き込み型のサイトを使うことを特に警戒している。


「業務に必要なのにアクセス制限されたサイトは?」という質問に対しては、「掲示板・SNS・ブログ」が35.6%でトップとなった(ネットスター「第5回 職場でのインターネット利用実態調査」)

 しかし制限が業務に悪影響を与えるという声もある。「業務に必要なサイトなのにアクセスが制限された経験がありますか?」という質問に対して、38.6%が「ある」と答えている。具体的なサイトは下記の通りで、「掲示板・SNS・ブログ(35.6%)」「ニュースサイト(26.7%)」「ウェブメール(24.7%)」「ソフト等のダウンロードサイト(24%)」「顧客のサイト(19.2%)」などが上位に並んでいる。

 掲示板やSNSは、製品やサービスの評判を確かめたり、ライバルの動向を確かめたりなどに使うのだろう。ネットの口コミの力が大きくなってきた現在では、ビジネスの上でも掲示板やSNSの動向を気にする人が多い。またニュースサイトは、いち早く情報をつかむために欠かせないし、顧客のサイトが制限で見られないのでは大きな問題になるだろう。このように画一的な制限は、仕事に悪影響を及ぼすことも多い。

 そのために制限解除を申し込む仕組みを用意している企業も多いが、利用する人は少ないようだ。「業務上必要なサイトなのに、制限を解除する申請が面倒なのでサイト閲覧をあきらめたことがありますか?」という質問に対し、70%の人が「あきらめたことがある」と答えている。ウェブ閲覧の場合、今すぐ見たいことが多いため、制限解除を面倒だと感じる人が多いようだ。

柔軟な対応とポリシーの確率が必要

 これについて高橋氏は「目的外の利用を抑制することは当然だが、業務に悪影響を与えるのでは意味がない。ウェブ閲覧を一律に禁止するのではなく、部門ごとに許容範囲を決めて柔軟に対応するべきだろう」と語っている。ウェブ閲覧をどこまで許すか、という基準(ポリシー)を決めるべきなのだが、アンケートによれば中小以下の企業ではポリシーを定めていないところが多い。また企業全体で一律のポリシーを定めているところが多く(46%)、部門ごとにポリシーを設定している企業は、全体の12%しかなかった。

 高橋氏は、アンケートを振り返って「リスク抑制のための閲覧制限と、ネット活用を両立させることを目指すべき。そのためには『警告表示を出して利用させる機能』『閲覧はOKだが、書き込みを制限する機能』などが必要になるだろう。一律ではなく、部門ごとに柔軟に対応することも必要だ」とまとめている。

 働く側にとっても、一律のウェブ閲覧制限はとても不便だ。プライベート利用だけでは認められないだろうが、仕事に必要なサイトは「制限を解除してほしい」と管理者に伝えるべきだろう。

●参考サイト
ネットスター社プレスリリース 「ネットスターの「職場でのインターネット利用実態調査」で、従業員ネット利用管理の新たな課題が明らかに」

http://www.yomiuri.co.jp/net/security/goshinjyutsu/20081121nt10.htm