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2008年11月20日(木) 00時00分

厚労幹部宅など厳戒…宅配業者に波紋読売新聞

元次官夫婦殺害
山口元次官の自宅付近で凶器など証拠品を捜す県警の捜査員ら(19日午前、さいたま市南区で)=菅野靖撮影

 元厚生事務次官の山口剛彦さん(66)夫妻がさいたま市南区別所の自宅で殺害された事件を受け、県内各地に厳しい警戒態勢が敷かれた。現場周辺をはじめ、元厚生官僚の自宅や学校などには、緊張した雰囲気が漂った。都内で元厚生事務次官宅が襲われた際に犯人が宅配便業者を装ったことで、業界に波紋が広がっている。

 事件発覚から一夜明けた19日、県警は早朝から山口さん宅などで現場検証を始めた。普段は人通りも少ない住宅街を大勢の警察官が警戒し、報道陣がカメラを構え、住民たちは緊張した面もちで出勤した。別所に約50年暮らす男性(81)は「こんなに騒々しくなるのは初めて。著名な画家や退職した政府高官も数多く住み、犯罪とは無縁だったのに……」と顔を曇らせた。

 同日夕、山口さん宅周辺の警戒線が解かれた。庭先には知人が供えたとみられる花束がいくつかあった。しかし、夫妻の遺体が見つかった玄関はブルーシートが張られたままだった。

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 県内と都内で元厚生事務次官の自宅が相次いで襲われ、県内の厚生・厚労関係者宅の警戒が強化された。

 江利川毅・厚生労働次官(61)の県内の自宅はパトカーや署員4人が終日警戒にあたった。近くの保育園職員は、出勤の際に制服警察官を見かけ、「また変質者が現れたのか」と驚いたという。別の職員は「緊張するが制服の警察官がいると安心」と複雑な表情を見せた。

 県西部の元社会保険庁長官宅でもパトカーと4〜5人の警察官が張り込み、ものものしい雰囲気。隣家の女性(55)は「今朝気付いたら、警察官がたくさんいて驚いた。奥さんが出てきてお掃除している姿をよく見かける。こんな事件があって、しばらく外出できないのでは」と気遣った。県南部の元社会保険庁長官宅も駐車場に警察車両を止めるなど警備を強化している。

 松本治男・県警本部長は19日の定例記者会見で「被害者、犯行手口の共通点を考えると、厚生省元幹部に対する連続テロの可能性が認められる。県警の全力を傾注し、早期の犯人検挙と第3の犯行の阻止に取り組みたい」と語った。

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 さいたま市教育委員会は19日、教育長名で、市立の小中高校など計163校の校長に「(県警が)犯人の身柄を確保したとの情報はない。事件は通学路に接する住宅で発生し、各学校は児童生徒の登下校の安全確保を配意願います」とメールを送信した。

 山口さん宅に近い、さいたま市立浦和別所小学校(児童数865人)は19日、PTAの地区委員や保護者の有志50人ほどが、地区班ごとのグループに分かれて通学する児童たちを引率。教職員約30人も通学路で見守った。吉田睦代教頭は「一刻も早く犯人を逮捕してほしい」と話した。

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 元厚生事務次官の吉原健二さん(76)の東京都中野区の自宅が襲われた際、犯人は宅配便業者を装っていた。

 佐川急便さいたま店(さいたま市西区)は19日の幹部の朝礼で、ドライバーは社名をはっきり告げ、荷物の送り主を明らかにして渡すよう改めて確認した。同店の運行管理担当者は「年末に向けて荷物が増える。こういう事件があると受け取る側は心配になる。特に夜は警戒されるのでは」と懸念する。

 ヤマト運輸埼玉主管支店(上尾市)も、管内84営業所に、ドライバーは制服や制帽、名札を着用し、訪問時に社名と名前を名乗ることを徹底するよう通達。ホームページに同社をかたる不審な訪問に注意するよう顧客に呼び掛けている。

 さいたま市内を担当する宅配会社のドライバー(30)は「ドアを開ける前に『どこからの荷物か』などと尋ねられることが増え、警戒心が強まっている」という。

元次官宅連続テロ

http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/saitama/news/20081120-OYT8T00516.htm