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2008年11月19日(水) 15時48分

元次官ら連続殺傷 不気味な犯人像 動機や移動手段、謎多く産経新聞

 元厚生事務次官2人の自宅が相次いで襲われた事件は、官僚時代に年金制度改革に奔走した共通の経歴や似通った手口から、厚生行政に絡む連続テロとの見方が強まっている。だが動機を明らかにする犯行声明などは確認されておらず、移動手段や被害者宅の特定方法など未解明な点も多い。

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 18日午前、さいたま市南区の自宅玄関で発見された山口剛彦さん(66)夫妻の遺体。いずれも胸を鋭利な刃物で複数回刺されていたが、普段着姿で着衣に乱れはなかったほか、室内に荒らされた形跡はなかった。金や物品目的の犯行をにおわせる状況は見られない。

 東京都中野区にある吉原健二さん(76)の自宅にいた妻、靖子さん(72)が、宅配便を装った男に胸などを刺されたのは同日夜。襲われたのはやはり玄関前で、野球帽の男は逃げ、家の中には入り込まなかった。

 元警視庁捜査1課長、田宮栄一氏は「一概に断定はできないが、2件の犯行は同一グループによる複数犯か、現場間の距離や犯行時間を考えると、同一人物であることも十分に考えられる。ただ、うち1件は妻だけを刺しており、綿密な計画性があったかには疑問が残る」と指摘している。

 山口さんと吉原さんは旧厚生省在勤時、年金局で現行年金制度の基礎作りに携わっており、動機との関連が浮かんでいる。しかし、現在のところ、テロ事件で犯行を誇示するために容疑者が報道機関へ送る声明は届いておらず、インターネット上での予告も確認されていない。

 いずれも被害者の住所が検索サイトに掲載され、旧厚生省の名簿などがなくても特定が可能だが、同姓同名の別人が住む場合もあり、現場の下見や顔写真を確認した可能性もある。

 作家の江上剛氏は「犯人への怒りは禁じ得ないが、もしテロなら、政治不信、官僚不信が極まれりということではないか。昭和初期の血盟団事件のように、世直しと称して『官僚一人一殺』という形で動く組織が現れたのかもしれない」と話した。

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