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2008年11月19日(水) 14時55分

厚労省HP、幹部350人の名簿削除読売新聞

厚労省がある中央合同庁舎第5号館では、金属探知機での検査など厳重な警備体制=岩波友紀撮影

 旧厚生省の山口剛彦(66)、吉原健二(76)両元事務次官宅が相次いで襲われた事件を受けて、厚生労働省は前夜のうちに幹部やOBに対し、宅配便の配達などに注意するよう連絡した。

 さらに、19日未明には、同省ホームページから幹部約350人分の氏名と肩書を載せた名簿を削除した。

 普段、地下鉄を利用して出勤している江利川毅次官はこの日朝、安全のため役所から差し向けられた公用車を利用した。自宅前は10人ほどの警察官が警戒し、物々しい雰囲気だった。

 同省は正面玄関前に金属探知機を設け、来庁者の持ち物をチェック。身分証の確認でも、警備員に警察官を加えた。若手職員の一人は「官僚機構を標的にした、つらい事件だ。警察は一日も早く解決してほしい」と沈痛な表情。殺害された山口元次官を知る男性職員は「大変残念だ。連続テロと言われているが、私はそうは思わない。偶然の一致ではないか」と自分に言い聞かせるように話した。

 吉原元次官、山口元次官が共に局長を務めた年金局の幹部は「通常業務に支障が出ないよう、粛々と仕事を進めたい」と話す一方、「早く犯人を捕まえてほしい」と不安を隠さなかった。

 舛添厚労相は都内の自宅前で、歴代幹部の身辺警護や役所の警備を警察に要請したとした上で、「仮に歴代幹部を政治的目的で狙ったテロだとすれば許しがたい。卑劣な行為は断じて許せない」と語り、迎えの車に乗り込んだ。同相宅周辺も警察官が増員され、車の後ろに警護車が付く厳重な警戒体制が取られた。

 文部科学省の幹部は「省内の緊張感は中央省庁が狙われた地下鉄サリン事件の後に似ている」と深刻な表情で語り、「公務に対する何らかの逆恨みによる犯行だとしたら許せない」と語気を強めた。

 道路特定財源の無駄遣い問題などで批判を浴びた国土交通省。宅配便に気を付けるよう出勤前に妻に注意を促したという道路局幹部は「家族も巻き添えにするやり方は許せない」と憤った。別の幹部は「国民全員の理解が得にくい事案を扱う担当者は、批判を浴びながら役割を果たさなくてはならない。今回のような犯罪は許しがたい」と話した。法務省では「事件関係者から恨まれやすいのは覚悟しているが、家族が狙われるのは心配だ」と幹部から不安の声が出た。

http://www.yomiuri.co.jp/feature/20081118-5344510/news/20081119-OYT1T00433.htm