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2008年11月19日(水) 22時56分

【元厚生次官ら連続殺傷】テロ行為に怒りと警戒感産経新聞

 元厚生次官ら連続殺傷事件について、政府は19日、「連続テロ事件」との見方を強め、警察当局による厚生労働省関係者の警備強化など再発防止に全力を挙げた。与野党からは事件への憤りの声や警備態勢の強化を求める意見が相次いだが、自民党からは厚生労働行政を批判してきた野党やマスコミの論調に事件発生の責任の一端があるとの声も上がった。

 麻生太郎首相は19日夜、「2つの事件が行政関係者や特定の役所を狙ったものと判明した段階ではないのでうかつなことは言えないが、明らかにテロだとすれば、断固たる処置をとるのは当然だ」と述べた。首相官邸で記者団の質問に答えた。

 首相は18日夜、吉原健二さんの夫人の襲撃の報を受けた際、公明党の太田昭宏代表ら与党幹部と会食中だった。ただちに漆間巌官房副長官に事件の徹底的な捜査と警備強化を指示し、その後、ホテルのバーに向かう予定だったが、「犠牲者が出ているので帰った方がいい」との周辺の助言をいれて帰宅したという。翌19日朝は、首相は日課としている自宅周辺の散歩を警備当局の要請で取りやめた。

 事件への憤りの声は、与野党を問わず、各党の幹部から一斉にあがった。

 自民、公明両党の幹事長・国対委員長会談では「絶対に許されない」「年金政策責任者がターゲットになったのなら、民主主義に挑戦するテロであり、大問題だ」との声が相次いだ。

 また、犯人が検挙されず、事件の背景が不明なことから、公明党の漆原良夫国対委員長が「わが党の坂口力元厚労相も注意してもらいたい」と述べ、厚労相経験者の身辺警護を強化するよう求めた。歴代の厚相、厚労相経験者には、厚労省から身辺に注意するよう呼びかける文書が届けられた。

 一方で、自民党の津島雄二元厚相は「厚労省の仕事をほとんど評価できないような論評のために不満が爆発し、今回の理不尽な行為につながったとすれば残念だ」と発言。「責任があるのは『あれが悪い、これが悪い』という国会の議論だ。そういう風潮を作るマスコミも考えてほしい」などと、野党やマスコミの論調が事件に影響を及ぼしたのではないかとの見方を示した。

 また、民主党の小沢一郎代表は横浜市内で記者会見し「いかなる理由があるにせよ暴力で人を殺傷することは許されるべきことではない」と事件を批判した。同党内には、橋本内閣時代に厚相を務めた菅直人代表代行の身辺警護を強化するよう気遣う声も上がっている。

 自民党は20日、治安対策特別委員会を開催し、警察庁から事件の報告を受けるとともに、再発防止策や厚労相経験者や厚労関係議員の警備強化などを協議する見通しだ。

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