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2008年11月19日(水) 21時53分

支持率低迷、民心も離反か 馬政権発足から半年産経新聞

 【台北=長谷川周人】今年5月に馬英九政権が発足してから20日で半年となる。中台対話の再開で両岸関係の緊張緩和を促す一方、内需拡大策を矢継ぎ早に打ち出し、「経済再建」(馬総統)を目指してきたが、国際金融危機もあって振興策は実を結ばず、支持率も低迷している。焦って対中接近を急げば、独立派を刺激しかねない。一方、陳水扁前総統が逮捕されてから1週間となるが、陳氏の支持者らは22日に抗議集会を開き、攻勢を強める構えだ。不満を募らせる住民への対応を誤れば、民心の離反は深刻さを増す。

 3月総統選で中国国民党の馬総統は、陳前政権の腐敗と経済の建て直しを掲げ、大勝した。政権発足後は中台民間トップ会談を再開させ、直行便拡大など中国が求める「三通」(中台間の直接の通商、通航、通信)実現に道筋をつけ、中国経済との「共存共栄」(国民党・呉伯雄主席)に動き出した。

 一方、域内経済の活性化では、景気刺激策として年末までに1400億元(4060億円)の公共投資を実施、さらに日本が行った地域振興券に似た「消費券」の発行も決めた。全住民に3600元(約1万円)分の商品購入券を来年1月の春節(旧正月)前に支給する計画で、消費拡大を狙う。

 しかし、下落する株価の底は見えないほか、「消費券」の経済効果についても「限定的」との見方が根強く、政権浮揚に結びつくかは未知数だ。19日付の聯合報によると、馬政権に「満足」と答えた人は37%と最低を記録、内閣刷新を求める人は過半数を占めた。

 こうした状況下で司法当局は陳前総統の逮捕に踏み切った。逮捕直前には中国要人の陳雲林・海峡両岸関係協会会長が来台、中台接近に反発する住民と警官隊が衝突する事態となり、野党・民主進歩党の有力立法委員(国会議員)は「噴き出す不満を政権は陳水扁氏逮捕でかき消した」と批判する。

 「逮捕は政治迫害」と訴える陳氏は、独居房からハンストによる抗議活動を展開。「体調悪化」による入院は3日間続き、19日に再拘留されたが、最高検は同日、陳氏の妻、呉淑珍夫人を15日に続いて事情聴取するなど、夫妻の起訴に向けて準備を進めている。

 起訴となれば、クリーンなイメージの馬政権にとって追い風となるが、陳会長来台では警察の抗議住民への取り締まりが「民衆に向けた暴力だ」と、独立派やメディアの非難を浴びた。

 週末には熱狂的な陳水扁氏の支持者が、民進党有力者らと合流し、台北市内で抗議集会を計画しており、波状的に続く陳氏擁護の集会への対応を間違えば、世論を先鋭化させ、政権が窮地に陥る可能性もある。

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http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081119-00000599-san-int