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2008年11月19日(水) 21時38分

グルジア軍事行動、欧米メディアの批判報道相次ぐ 情報戦争第2幕も産経新聞

 【モスクワ=遠藤良介】8月のグルジア紛争をめぐり、欧米の主要メディアでグルジア側の軍事行動を批判する報道が相次いでいる。欧米メディアは従来、ロシアがグルジアに侵攻した事実に重きを置いていたが、ここにきて、軍事介入の口実をつくったグルジアの南オセチア自治州攻撃を「過剰で不適切だった」と指摘している。他方、これを機にロシアは侵攻を正当化するPR攻勢を再開しており、情報戦争の第2幕が開いた感もある。

 米紙ニューヨーク・タイムズは、駐グルジア欧州安保協力機構(OSCE)監視団員の報告内容として「経験不足のグルジア軍は8月7日、南オセチアの州都ツヒンバリを無差別に砲撃した」と報道。「グルジアの爆撃に先立つ数時間内に(南オセチア側からの)グルジア人村落への砲撃は聞かれなかった」とも伝え、「(この内容は)グルジアの主張に疑問を投げかける」と指摘した。

 グルジアは従来、「開戦に先立ってロシア軍部隊が南オセチアに越境したため、自衛のための戦闘を余儀なくされた。民間人は攻撃していない」(政府筋)などと主張。これに対し、ツヒンバリを独自取材した英BBCは「グルジア軍戦車は住居を攻撃、兵士らは車で逃げようとする一般市民を銃撃した」などとする住民の証言を紹介した。

 ロシアはこうした欧米メディアの論調を歓迎しており、チュルキン国連大使はニューヨーク・タイムズに「米メディアが真実を語り始めるまでに3カ月を要した」などとする書簡まで送った。紛争勃発(ぼつぱつ)後、グルジアのサーカシビリ大統領が頻繁に英語放送に出演、政権幹部も外国メディアに取材便宜を図ったのに対し、ロシアには情報戦争で出遅れたとの意識が根強い。サーカシビリ政権を支援した米ブッシュ政権の任期切れを機に、ロシアが欧米諸国に対グルジア政策の変更をいっそう迫るのは必至だ。

 もっとも、英BBCは「ツヒンバリが大規模に破壊されたとのロシアの主張も大幅に誇張されている」と「2000人虐殺」説を唱えたロシア側も非難。ミリバンド英外相も「グルジアの行動は無責任だった」とする一方で「ロシアの報復は過剰かつ誤ったものだった」(BBC)としている。ロシアのイラリオノフ元大統領補佐官は「ロシアは4年前から戦争を準備していた」と語っており、紛争原因については冷静な判断が求められている。

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