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2008年11月19日(水) 21時05分

海賊が身代金要求 「攻撃になすすべない」情報センター所長産経新聞

 【シンガポール=宮野弘之】アフリカ東部ケニア沖の公海上で、ソマリアの海賊に乗っ取られたサウジアラビアの大型石油タンカー「シリウス・スター」は19日現在、ソマリアのハラルデーレ付近に係留され、海賊との間で身代金の交渉が行われているもようだ。一方、今回の襲撃事件を受けてマレーシアのクアラルンプールにある国際海事局(IMB)海賊情報センターのノエル・チョン所長は、産経新聞の電話インタビューで、「今は海賊の攻撃になすすべがない。海賊の活動範囲が広がり、どの船も標的になりうる」と、警戒を呼びかけた。

 ロイター通信は19日、大型タンカーを所有するサウジ国営石油会社サウジアラムコが第三者を通じ、身代金交渉を行っていると伝えた。海賊は2億5000万ドル(約240億円)を要求しているとの情報もある。

 チョン氏によると、今回、大型タンカーを乗っ取ったのは、ソマリア沖のアデン湾で活動する海賊とは別のグループで、ケニア沖で活動を活発化させていたという。 

 現在、アデン湾には米欧各国に加え、インド、トルコ、ロシア、マレーシアなどが海軍艦船などを派遣している。だが今回、海賊の活動範囲がインド洋の3分の1にも及ぶことがわかり、各国は新たな対応を迫られている。

 チョン氏は、「国連や国際社会がもっと真剣に問題に取り組むべきだ。現状では、捕まる危険性が低く、見返りが多いから犯罪行為が横行する」と指摘した。

 そのうえで、取り締まりが徹底されるまでの対応として、「各船舶は、目視やレーダー監視を増やし、数隻の小型船舶と母船を発見したら、とにかくスピードを上げて逃げるしかない」と忠告した。

 一方、アデン湾では18日にイランの貨物船とタイの漁船が、19日にはギリシャの貨物船が相次いで海賊に乗っ取られた。18日の襲撃では、米海軍機が急行したが、間に合わなかったという。これに対し、インド海軍は19日、同湾内で同軍艦船に攻撃してきた海賊船2隻のうち1隻を交戦の末、撃沈したと発表した。

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