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2008年11月19日(水) 00時26分

元次官襲撃、テロの可能性 殺人・未遂事件で捜査産経新聞

 さいたま市南区別所の元厚生事務次官、山口剛彦さん(66)と妻の美知子さん(61)が18日午前、胸から血を流して死亡しているのが見つかり、埼玉県警は殺人事件と断定した。同日夜には東京都中野区上鷺宮の元厚生事務次官、吉原健二さん(76)方で、妻の靖子さん(72)が胸や腹などを刺されて重傷を負い、警視庁は殺人未遂容疑で捜査。山口さんと吉原さんは局長や課長として年金関連のポストを務めていたことから、警察庁は元厚生省幹部を狙った連続テロの可能性があるとみて、警視庁と埼玉県警に捜査を指示した。

 政府高官は同日夜、「意図的なテロなら断固阻止しなければならない」と述べた。警察庁は厚生事務次官経験者らの警備強化を全国の警察本部に指示。19日に埼玉県警と警視庁の幹部を集めて捜査会議を開くことも決めた。厚生労働省も歴代幹部に身辺を注意するよう連絡した。

 埼玉県警は浦和署に、警視庁は野方署にそれぞれ捜査本部を設置した。

 浦和署捜査本部の調べでは、18日午前10時15分ごろ、山口さん夫婦は自宅玄関内側で普段着姿であおむけに倒れているのを親戚(しんせき)が見つけた。靴は履いていなかった。着衣に乱れはなく、2人とも胸に数カ所の刺し傷があった。周辺の床や壁に血痕があり、2人は玄関付近で刺されたとみられる。

 玄関ドアは閉まっていたが鍵はかけられておらず、室内に物色した痕跡はなかった。凶器は見つかっていない。山口さん方は2人暮らしだった。

 一方、野方署捜査本部の調べでは、午後6時半ごろ、吉原さん方に宅配便を装った男が訪れ、靖子さんが玄関ドアを開けたところ、いきなり刃物で胸や腹など数カ所を刺された。近くを通りかかった帰宅途中の専門学校生(27)が悲鳴を聞いて駆けつけ、自宅前で倒れている靖子さんを発見して119番通報した。

 調べでは、男は年齢30歳前後、身長約160センチで、野球帽をかぶっていた。凶器は見つかっていない。

 吉原さん方は夫婦と長男の3人家族で、靖子さんは当時、1人で自宅にいた。吉原さんは無事が確認された。

 山口さんは昭和40年に旧厚生省に入省し、汚職事件で辞任した岡光序治元事務次官の後任として平成8年から11年まで事務次官。吉原さんは昭和30年に旧厚生省に入り、社会保険庁長官を経て、63年から平成2年まで事務次官を務めた。

 昭和60年に現在の基礎年金制度が創設された際、吉原さんは年金局長、山口さんは年金課長をそれぞれ務めるなど、年金行政に深くかかわっていた。

                  ◇

 【元厚生事務次官宅殺傷事件の経過】

11月18日

午前5時半ごろ さいたま市の山口剛彦さん宅の雨戸が開いているのを隣人が確認

午前10時15分ごろ 山口さん宅玄関から血が流れているのを近所の人が発見、110番通報

10時22分ごろ 同市消防局に山口さんの親戚と名乗る人から「けが人が2人いる」と119番通報

午後4時半 埼玉県警が捜査本部を設置

午後6時半ごろ 東京都中野区の吉原健二さん宅で、妻の靖子さんが刺される

午後8時半ごろ 厚生労働省が、警察当局に歴代事務次官の周辺警備を要請

午後10時前 伊藤哲朗内閣危機管理官が首相官邸に戻り情報収集

午後10時 警視庁が捜査本部を設置

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081119-00000509-san-soci