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2008年11月19日(水) 20時17分

<中国残留孤児>秦さんの身元確認 判明は4年ぶり毎日新聞

 肉親捜しのため一時帰国している中国残留孤児3人のうち秦永珍さん(73)の身元が19日、山形県出身の高橋定子(さだこ)さんであることが確認された。肉親との対面調査による身元判明は4年ぶりで、81年の調査開始以降684人目。秦さんは「うれしくて、温かい気持ちになった」と60年以上の歳月の重さをかみしめた。

 秦さんは8歳ごろまで、家族4人と山形で暮らしていた。しかし旧満州(中国東北部)に渡った2年後の終戦時、一家で避難する途中に銃撃を受け両親と弟妹を失い、ショックで日本語も日本の思い出も消えてしまった。難民収容所で養父に引き取られた後も、恐怖から1年間は言葉を出せなかったという。

 祖国の記憶は、目の前に海が広がり林の奥に線路があった家の周囲の風景、それと「高橋」と書かれた木札だけ。それでも厚生労働省が開拓団の名簿などを調べる過程で、いとことみられる同じ年の女性が見つかった。この日の対面調査では、秦さんと、いとこの母の顔が似ていることなどに加え、記憶の中の風景が一致していたことが、身元確認の決め手になった。

 会見で秦さんは「肉親が見つかったので、行き来したい」と話したが「当時の人のことは何も覚えていない」と繰り返し、思い出を共有できなかった寂しさをのぞかせた。

 厚労省は身元がまだ判明していない康玉芹さん(68)、李義華さん(63)の情報を引き続き求めている。連絡先は同省中国孤児等対策室(03・3593・7890)。

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