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2008年11月18日(火) 16時03分

「安さ」が武器の生活防衛関連株、景気悪化で物色対象にロイター

 水野 文也記者
 [東京 18日 ロイター] 生活防衛関連株が注目度を高めている。景況感の悪化が進み、消費者が財布のひもを締めて生活防衛に走っているとの観点から、低価格を武器にしたビジネスにニーズが集まっているとの見方が浮上。
 市場で文字通りのディフェンシブストックとして物色されている。製品値上げで買い控えが目立つ食品の中では、価値上昇で逆に贈答品として製品が見直され、物色されている銘柄も出てきている。
 <マクドナルドやコンビニ株に買い>
 実際、株式市場では「低価格」から集客力向上がイメージされる銘柄が物色されていた。決算発表シーズンが本格化し、今期の業績見通しに対する不安が高まっていた10月27日から11月13日にかけて、日本マクドナルドホールディングス<2702.Q>が13営業日連続の上昇を記録したほか、エービーシー・マート<2670.T>も13日に年初来高値3470円まで上昇。ファミリーマート<8028.T>などのコンビニ株も底堅い動きを示した。
 今週に入ってから、リード役となった銘柄に一服しているものもあるが「景気悪化が言われているうちは、生活防衛関連株が注目を集める可能性が高い」(中堅証券情報担当者)との声も出ている。
 17日にはJ.フロントリテイリング<3086.T>が、秋冬物衣料品や美術・宝飾品などの不調で10月の連結売上高が前年同月比9.6%のマイナスと発表したが、こうした百貨店業界の大きな落ち込みは、消費者の生活防衛を象徴しているものとして注目されていた。
 <米欧に比べ日本の個人消費は堅調との見方>
 消費全体についても、家計が過剰債務に陥り先行きが懸念される米国に比べ、日本は相対的に落ち込みが小さいとの指摘もある。
 小売セクターの投資評価を「Market Weight」から「OVERWEIGHT」に引き上げたクレディ・スイス証券では「金融危機の影響で日本の個人消費環境も悪化、景気後退とデフレ傾向が明確化と予想する」と前置きした上で「実需によるサポート、日本の消費者のバランスシートの健全性などからクラッシュ的に悪化するリスクは限定的になろう」と分析していた。
 追加経済対策の目玉である定額給付金が控えていることも、小売セクターにとって追い風になるが「給付金は預貯金に回さず消費されるとしても、景気に上向きの気配が感じられなければ、生活防衛が意識される中での消費となる」(別の準大手証券トレーダー)といった見方も出ている。
 <値上げでギフト価値上がる、一部食品メーカーも好調>
 他方、値上げによって販売数量の減少が目立つ食品会社も、贈答品などに使われる製品を取り扱う銘柄に関しては生活防衛関連にカウントできるという。「生活防衛の流れでは安い商品が売れ筋になるのが基本だが、歳暮など贈答品はその限りではない」(岡地証券・投資情報室長の森裕恭氏)との見方があるためだ。
 実際、日清オイリオグループ<2602.T>では、2007年度から8回の値上げを実施した影響で全体の数量が減少する中、贈答品が好調に推移している。同社の贈答品として売れ筋は特定保険用食品である健康オイルで、健康意識の高まりも売れた背景にあるとみられているが「製品の価格が上昇したことで、逆にギフトとしての価値が上がり、贈答品としてのニーズが増えた」(広報担当者)という。食用油やハム、酒類など食品のほか、洗剤など日用品なども生活防衛を意識した贈答品として注目されている。
(ロイター日本語ニュース 編集 田巻 一彦)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081118-00000719-reu-bus_all