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2008年11月18日(火) 08時05分

党首会談 民主、強硬路線に転換 景気対策×補正見送り、首相の矛盾突く産経新聞

 □首相「話を聞き置いただけ」

 民主党の小沢一郎代表は17日の党首会談で、新テロ対策特別措置法改正案の参院採決を「人質」にして、平成20年度第2次補正予算案の今国会提出を迫る強硬路線にかじを切った。麻生太郎首相が「政局より政策」と唱え、景気回復を重視する考えを表明していたにもかかわらず、補正予算案の今国会提出に慎重姿勢を崩さない「矛盾」を突いた格好だ。これに対して、政府・与党は年末年始までの大幅な会期延長を断行してでも新テロ法案などの成立を図る構え。ただ、景気悪化の懸念が深まる中、民主党もいつまでも強硬姿勢を貫けるかは不透明。これからクリスマスにかけて与野党対決は激しさを増しそうだ。

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 ◆「オレが直接」

 小沢氏「国民との公約を実現しないのは遺憾であり理解できない」

 首相「10月30日に(編成方針の発表を)やったばかりで、調整している。出したいという思いはある」

 17日の党首会談で、首相は、2次補正の編成作業が手間取っていることを理由に、小沢氏が求めた今国会提出には応じられない考えをやんわりと伝えた。

 今国会に提出させて、その審議期間中に衆院解散含みの国会運営を仕掛けて、政府・与党を追い込んでいく−。そういう小沢氏の思惑は肩すかしを食らった。

 民主党はこれまで、新テロ法改正案や金融機能強化法改正案の採決に応じ、会期延長を求めない考えだった。小沢氏が方針を転換したのは、首相が緊急首脳会合(金融サミット)に出席した際の14日、記者団との懇談で、衆院解散を来春以降に先送りする考えを示唆したことだった。小沢氏は「完全に頭に血が上った」(幹部)。

 終盤国会の対応協議のため、17日午前に党本部で開かれた役員会。菅直人代表代行、鳩山由紀夫幹事長、輿石東参院議員会長、山岡賢次国対委員長から首相への批判が相次いだ。その発言を引き取る形で、小沢氏はこう言い切った。

 「オレが直接、聞いてやる」

 強硬路線を堅持し、補正予算案提出を先送りする政府・与党を揺さぶり、次期衆院選を視野に国民の支持を拡大する。民主党幹部は会談後、今後の国会運営に自信をのぞかせた。

 「補正予算案で国民の関心の高い分野を突いていけば、麻生政権に打撃を与えることができる」

 しかし、小沢氏には、首相に伝家の宝刀を抜かせられない焦りもある。

 共産党の市田忠義書記局長は17日夜の緊急記者会見で、こう語った。

 「自民党も民主党も迷走しているということだ」

 ◆ワナのにおい

 「9割は小沢氏が話していた。首相は借りてきたネコだった」

 民主党幹部のひとりは、党首会談をこう評した。会談が小沢氏のペースだったことは麻生首相本人も認めている。17日夜、自民党総務会メンバーとの懇親会で首相はこう語った。

 「突然、(会談を)持ち込まれ困ったよ。相手の意図も分からず、話を聞き置いただけだ」

 それでも、首相は党首会談で小沢氏を牽制(けんせい)することは忘れなかった。小沢氏の主張の裏に「補正審議を行き詰まらせて解散に追い込むワナ」のにおいを嗅(か)ぎ取ったのだ。

 「補正予算を出すと、その審議で臨時国会を越年させ、1月まで引っ張って、どうのこうのするつもりじゃないんですかね?」

 小沢氏自身は否定するが、複数の与党幹部は「小沢氏は会談で『2次補正を出せば採決に協力する。約束をほごにしたら辞めてもいい』とまで言った」という。だが、これも自民党幹部には「いつもの手」と映ったようだ。

 ただ、小沢氏の提案を拒否しても、やはり新テロ法成立のために大幅な会期延長は不可欠になる。

 提案を受けても拒否しても会期延長という危険地帯に足を踏み入れなければならない状況に追い込まれた政府・与党。自民党幹部は17日夜、「会期延長は仕方がない。新テロ法案や金融法案を野垂れ死にさせるわけにはいかない」と語り、苦渋の表情を見せた。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081118-00000086-san-pol