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2008年11月18日(火) 00時00分

京の都に猫女将?!読売新聞


宿泊客のこころを結ぶ、チャーミングな看板娘(撮影:鈴木美也子)

温厚で人懐っこく、仕草がたまらなくかわいい(撮影:鈴木美也子)

場所柄外国人観光客の利用も多い(撮影:鈴木美也子)
「猫の可愛さは万国共通」を体現!世界的アイドル、エミリーちゃん

 JR京都駅近くの旅館街。昔ながらの街並みに小さな和風旅館が立ち並ぶこの一角は、リーズナブルな価格と交通の便のよさ、そしてアットホームな雰囲気で、国内のみならず海外からの観光客にも人気のエリアだ。なかでも「藤家旅館」の看板猫、エミリーちゃんはその可愛らしさで、わざわざ海外からはるばる会いにくるファンがいるらしいとのこと。これは取材しなければ!ということで、さっそくアポを取り、カメラマン鈴木氏と訪ねたのだった。

 京都に着いたのは夜だった。ガラスを木で縁取った、懐かしい形の引き戸を開けると、明るい女将さんがお出迎え。外国からのお客さんが観光から続々と帰ってきているところだった。

 「エミリーちゃんはどちらですか?」と訪ねると、階段の踊り場にいるとのこと。グリーンの瞳にグレーの小さめな体のエミリーちゃんが、踊り場にちょこんと香箱座りをしているではないか!老舗旅館の看板猫として、お客さんを出迎えているつもりなのだろうか。眠たいのをこらえてなんとか目を開けているふうだった(笑)。

 エミリーちゃんはロシアンブルーの女の子。小柄で人懐っこい性格のせいか、子猫のように愛らしいが、もう8歳なのだそう。首輪に付けたターコイズのアクセサリーが、グレーの毛並みに映えて、それはもう良く似合っている。さすが京娘らしく、鳴き声も控えめで上品だ。わたしたちはまたもやノックアウトされてしまった。

 藤家旅館には長期滞在する人も多いらしい。お客さん同士、会話も弾んでいる様子。エミリーちゃんは踊るようにお客さんたちのあいだを歩いている。お客さんチェックだろうか?(笑)

 旅館の夜は早い。わたしたちも翌日に備えて休むことにした。

 お出迎え、お客さんに挨拶など、看板娘のエミリーちゃんは旅館の仕事を見事にこなしていた。ならば、お客さんがよく休めているかどうかも気になるに違いない、と思った。夜の見回りにやってくるような気がしたのだ。だから、襖をエミリーちゃんが通れるくらいだけ開けておいた。

 しばらくすると、小さな鈴の音が。襖を見やると、顔だけをのぞかせてこちらを見るエミリーちゃんの姿が。「やっぱり来てくれた!」大喜びするわたしたち。わたしたちのウエルカムな様子に安心したのか、あの踊るような足取りで部屋の中へ。布団へ案内すると、なんとエミリーちゃんは。こちらを向いたまま、頭を枕にのせて横になったのである。一緒に眠れるなんて!舞い上がって大声を出しそうなところをこらえて、エミリーちゃんの横に並んで眠る準備をした。エミリーちゃんはしばらくのあいだ、「ニャ。ニャ。」と何か話をしていた。きっと藤家旅館のことや京都のことを教えてくれているのだろう。至福のピロートークである。そのうち話疲れたのか、眠ってしまった。

 すかさずカメラを持って忍び寄る鈴木氏。まるで人間のように頭を枕にのせて眠る、最高に可愛らしいエミリーちゃんを捉えることに成功した。さすが鈴木氏!奇跡の一枚をぜひ本誌でチェックして欲しい。

 翌朝、お客さんが出掛けたあとに、じっくりとエミリーちゃんの取材と撮影をした。そこでも可愛らしいポーズを惜しげもなく披露。老舗旅館の看板猫として、京都のアイドルとして、自分の役割をよく理解しているようだった。

 旅は、楽しいことばかりとは限らない。気分がどんよりと沈むこともあるだろう。海外からのお客さんも、遠い異国でさみしくなることもあるだろう。そんな人たちの心を癒し、一瞬で笑顔にしてしまうエミリーちゃんはかなり偉大だ。そしてエミリーちゃんの偉大さは万国共通である。

 これからもインターナショナルな看板猫として、大女将、若女将とともに藤家旅館を盛り立てていってほしいと切に願うのだった。

    藤家旅館 ふじやりょかん       場所 京都市下京区不明門通七条下ル       TEL:075-351-3894

http://www.yomiuri.co.jp/komachi/pet/neko/neko081118.htm