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2008年11月18日(火) 00時00分

親元で就職できない読売新聞


求人票を見る高校生。地元企業の棚は空いている(五所川原農林高で)
地方の高3「フリーターでも…」

 米国発の金融危機の影響で、国内の多くの企業が新卒者の採用抑制にかじを切り始めた。その余波を、地方の高卒予定者たちがまともに受けていた。

「求人票」撤回次々 「派遣」も募集なし

 「話すのがつらいんだけど、試験を受けられなくなったから」

 先月中旬、青森県立五所川原農林高校の女子生徒(18)は、担任教諭にそう通告された。学校に求人票を送ってきた地元の縫製工場に数日前、応募書類を送ったばかりだった。

 「東京の親会社から、生産を増やすことが難しいので募集は行わないで欲しいとの連絡があり、やむなく断念致しました」。工場から学校への連絡はA4判の紙1枚のみ。採用断念の説明は、その上半分ほどにしか書かれていなかった。

 女子生徒の進路希望は「実家から通える会社への就職」。青森県内には専門学校や大学が少なく、県外に進学すれば両親に負担をかける。県外での就職も、一人暮らしは不安が大きい。数少ない求人の中から地元スーパーを探し出し、今は、その採用試験の結果を祈るようにして待っている。

 高卒予定者の採用状況はここ数年、団塊の世代の大量退職に伴って徐々に回復していた。

 しかし都市部に比べ地方での求人は極端に少ない。今年7月の高校卒業予定者の求人倍率は、三大都市圏で1・97倍だったのに対し、それ以外の地域は0・73倍しかなかった。そこに9月以降の金融危機が直撃し、北海道、山形、山口などのハローワークには求人票を撤回する企業が続出。求人を前年より絞り込む企業も増えている。

 女子生徒の高校では、就職が決まらない生徒には、やむを得ず派遣会社を紹介してきたのに今年はその求人すらない。「全国で派遣社員の削減が進んでいるためだろうか」。進路指導を担当する水島康雄教諭(59)は不安を募らせる。

 鳥取県内の私立高校3年の女子生徒(17)も就職先が決まらずにいる。

 「就職できないのかな」「フリーターでも仕方ないか」——。同級生との会話も弱気になるが、「いや、頑張ろうよ」と励まし合う毎日だ。今秋以降の景気後退と、自分の就職がうまく行かないことに関係があるのかはよくわからないが、景気が良い時に就職した先輩の話を聞くと、「うらやましい」と感じてしまうという。

 宮城県内の県立高校に通う女子生徒(18)も9月、事務職を希望して仙台市内の会社を受けたが、2人の求人に何十人も募集が殺到し、希望はかなわなかった。

 学校への求人自体も、株価が大きく落ち込んだ10月になるとぱったり途絶え、90人近い就職希望者のうち就職が決まったのは40人ほど。進路指導担当の教諭は沈痛な表情を見せた。

 「今年の生徒は就職への危機感でみな意欲は高い。何とかしてあげたいが、求人が来ないことには手の打ちようがない」

http://www.yomiuri.co.jp/national/kishimu/kishimu081118.htm