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2008年11月17日(月) 13時40分

<画像診断>警察庁積極導入へ 司法解剖わずか3.8%毎日新聞

 07年6月に起きた大相撲時津風部屋の力士急死事件などを受け、警察庁は17日までに、09年度から全国160人の検視官を10人増員し、検視官を補助する警察官も168人から340人に倍増することを決めた。

 検視を巡っては、警察庁は07年度から検視にAi(死亡時画像病理診断)を担うCTを導入する費用を予算に計上。検死官の増員は、死者の声なき声に積極的に耳を傾けようという、捜査当局の「攻め」の姿勢の表れだ。

 変死体が見つかると、通常は検視官が事件性があるか遺体を調べる。本来は検察官の仕事だが警察官が代行し、10年以上の刑事経験を積み、法医学の専門教育を受けた警察官が任命される。07年に全国の警察が扱った死体は15万4579体で10年前の1.6倍に増えた。検視官が現場に赴いたのは11.9%。犯罪が疑われるとして司法解剖されたのは3.8%に過ぎない。

 約9割は現場の警察官が事件性の有無を判断する。ほとんどは解剖されず、警察官や立ち会いの医師が表面上の状況から、経験などによって判断しているのが現状だ。解剖されたとしても、執刀する法医学者は全国で約120人と不足している。

 そうした現状に対して、警察庁は検視官らの人的な拡充と、CT(コンピューター断層撮影)、MRI(磁気共鳴画像化装置)といった最新の検査システムを併用することで、事件性が疑われる変死体の死因特定につなげていきたい考えだ。

 それだけに、警察庁幹部はCTなどの先端機材を備えたAiセンターの普及について「検視官不足を補う意味でも大きい」と期待を寄せる。

 一方、千葉大大学院の岩瀬博太郎教授は「死後にCTを撮ることで逆に犯罪が疑われ、司法解剖の要請が増えると思う。解剖医が足りないなど現状を変えなければならない」と、抜本的な対策を望む声も現場からは上がっている。【長野宏美】

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