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2008年11月17日(月) 08時04分

金融サミット 首相意欲、招致固まらず 解散も景気次第産経新聞

 【ワシントン=高木桂一】世界経済の安定化に向けて開かれた緊急首脳会合(金融サミット)で麻生太郎首相は、一定の存在感を示した。深い傷を負った米欧諸国に比べれば、日本の実体経済への影響は小さい点も首相の立場を引き立てた。しかし、金融ショックをめぐる国際協調が国内経済を上昇気流に乗せる保証はない。「経済の麻生」を自負する首相は皮肉にも、伝家の宝刀の衆院解散権を視界不良となっている「景気」に事実上握られている。

 「わたしは具体的な提案を行い、それが首脳宣言にも反映された」。首相は15日夕(日本時間16日朝)、サミット閉幕後にワシントン市内で行った記者会見で、こう胸を張った。

 首相は国際通貨基金(IMF)への1000億ドル(約10兆円)融資などを矢継ぎ早に打ち出した。ドル基軸体制堅持などを盛り込んだ「麻生提案」はブラウン英首相らに称賛された。14日のワーキング・ディナーでは主催者のブッシュ米大統領から最初の発言者に指名され、15日付ワシントン・ポスト紙にはインタビュー記事が掲載されるなど米有力メディアからも注目を集めた。

 それはなぜか。「失われた10年」を経験した第2の経済大国への国際社会の期待であると、麻生首相は記者会見で強調した。

 ただ、首相が意欲をみせていた金融サミットの第2回会合の日本開催を固めることはできなかった。フランスのサルコジ大統領が15日の会見で、ロンドンで開催される可能性が高いと述べるなど、首相の思惑通りに行くとは限らない。国際金融を安定化させるまでの課題も多く残っている。

 国民が外交の果実を肌で感じられなければ、首相は自身を取り巻く厳しい国内事情をカバーできない。

 同行筋によると、首相がこれまで解散を想定したタイミングは2度あった。就任直後の臨時国会冒頭の10月上旬と、11月初旬だった。だが10月下旬に北京で開かれたASEM(アジア欧州会議)に出席し、経済低迷にあえぐ各国首脳の悲鳴を耳にし「選挙をやっている状況にない」と解散を封印する決断を下した。

 首相は14日、解散・総選挙を平成21年度予算成立後の4月以降に先送りする考えを示唆した。「景気対策優先」が大義だが、実際には内閣支持率と株価が思うように上がらず、解散はできない「自己都合」の側面が強いといえる。迷走をたどる定額給付金を目玉とする追加経済対策への世論の支持は高くなく、首相の求心力に陰りがみえ、景気頼みの「経済管理内閣」はきしみだしている。

 首相は22、23日のペルーでのアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議や、12月中旬に福岡市での開催が調整中の韓国、中国との3カ国首脳会談など年末に向け外交を積極展開し、政権浮揚への足掛かりを模索している。

 だが、7月の北海道洞爺湖サミットで福田康夫前首相が温暖化対策の論議を主導しながら、2カ月足らずで退陣表明となった経緯もある。

 自民党内では来年1月の通常国会冒頭での解散を逃せば、「ねじれ国会」のもとで解散に追い込まれ、そのまま下野しかねないのではとの空気も漂い始めている。先が見えない景気に政局を委ねる首相への不満もくすぶっている。

 ある自民党有力議員はこう不気味にささやく。

 「麻生さんがもたもたしていると、総選挙の前に総裁選がある」

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http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081117-00000039-san-pol