記事登録
2008年11月17日(月) 08時04分

新銀行東京融資詐欺 「三菱東京」も焦げ付き 3億超、マルチ業者も口利き産経新聞

 新銀行東京の融資金詐欺事件で、融資金の大半を得ていたソフトウエア会社「アシストプラン」(大阪市)の関連会社2社が平成17年、偽造決算書を使って旧東京三菱銀行(現三菱東京UFJ銀行)から融資を受け、三億数千万円が焦げ付いていたことが16日、分かった。マルチ商法(連鎖販売)業者が同行に2社への融資を口利きしていたという。警視庁捜査2課は同行から関係書類の任意提出を受けており、新銀行事件で暗躍した詐欺グループの実態解明を進めている。

                   ◇

 この詐欺グループによる被害が新銀行以外で判明したのは初めて。融資の窓口となった旧東京三菱銀行渋谷法人新規室では多数のずさん融資が発覚、同行が10月、今回の融資も含め金融庁に報告書を提出する事態となった。同行の審査体制のあり方も問われそうだ。

 融資金の返済が不能になったのは、アシスト社社長の寺口士文容疑者(32)が社長だったインターネット関連会社「ワンワールド」(東京都港区)と、アシスト社元幹部の大杉澄夫容疑者(46)が社長を務めていた通信機器販売会社「スプーン・ジャパン」(大阪市)。新銀行事件で登場したアシスト社や給排水設備会社「リフレックス」(東京都中野区)などを含め「ワンワールドグループ」と言われている。

 捜査2課の調べなどによると、ワンワールドグループが旧東京三菱から融資を受けるきっかけは、マルチ商法を展開するインターネット機器販売会社「ユナイテッド・パワー」(港区)社長の口利きだった。社長は17年3月ごろ、渋谷法人新規室幹部に「どうしても会わせたい人がいる」と話し、ワンワールドグループ幹部を引き合わせた。

 ユナイテッド社は19年8月、消費者に「絶対にもうかる」などと虚偽の説明をして勧誘したとして、経済産業省から特定商取引法違反に基づく半年の業務停止命令を受けている。

 ユナイテッド社社長の口利き後、アシスト社、リフレックス、ワンワールド、スプーン社の4社は融資を申請。その際、新銀行事件と同様の手口で、売上高の水増しや借入金の圧縮などそれぞれが偽造した決算書を提出していたという。その結果、4社に計約6億円が融資された。

 18年1月に東京三菱とUFJ銀行が合併した後、決算書偽造が発覚。アシスト社とリフレックスの融資は回収されたが、残り2社の融資残高三億数千万円が焦げ付いた。

 三菱東京UFJ銀行広報部は「個別の取引はコメントできない」としている。

                   ◇

 ■60社70億円“不良” ずさん審査体制

 旧東京三菱銀行渋谷法人新規室では、今年に入って問題融資が表面化した。金融庁に報告を求められる事態となり、内部調査で約80社に約300億円を融資し、うち約70億円を焦げ付かせていたことが判明した。融資先には暴力団など反社会的勢力の関連企業が複数あった。役員クラスの同行幹部が問題融資を“口利き”したケースも。「メガバンクの雄」で、コンプライアンス(法令順守)体制が問われる融資が横行していた実態が浮かんだ。

 渋谷法人新規室は東京都渋谷区や世田谷区で融資先を開拓する部署。行内でもトップクラスの営業成績を誇り、連続表彰を受けるほどだった。

 しかし、今年に入り、不動産会社「コシ・トラスト」(渋谷区)と同社の紹介先約40社に計約80億円を融資し、十数億円が焦げ付いていたことが明らかになり、金融庁から報告を求められた。三井住友銀行もコシ社や同社の紹介先六十数社に計約170億円を融資し、約100億円が回収不能になっていることがすでに判明。警視庁捜査2課が捜査に乗り出している。

 金融庁の要請を受け、三菱東京UFJ銀行は渋谷法人新規室関連の融資について内部調査を実施。平成15〜17年にコシ社やワンワールドグループ分も含め約70億円の焦げ付きが見つかった。融資先約80社のうち約60社で問題があった。

 同行が問題先の一つとしているのが、社長がワンワールドグループへの融資を口利きしたユナイテッド・パワーと、ユナイテッド社の元役員が社長の映画制作会社「ルートピクチャーズ」(渋谷区)。両社合わせ約9億円を融資し、その半分が焦げついた。ルート社の融資を指示したのは同行執行役員だったとされる。ルート社社長は今年10月、違法カジノ店を開いたとして賭博開帳等図利の疑いで警視庁に逮捕されている。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081117-00000502-san-soci