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2008年11月17日(月) 03時06分

耐震偽装発覚から3年、再建ためいき・二重ローンも読売新聞

 耐震強度偽装事件の発覚から17日で丸3年。事件後、強度不足から退去を迫られた分譲マンション12棟のすべてで再建の見通しはついたが、住民は不況の中で二重ローンが現実となるなど、新たな不安との闘いも始まっている。

 「ようやく落ち着けるが、うれしさ半分、不安も半分」

 今月末に建て替えが完了する「グランドステージ(GS)千歳烏山」(東京都世田谷区)の会社員西川智さん(38)は複雑な心境だ。

 約3800万円のローンを背負い、入居2年余で偽装が発覚。国などの補助を受けても、建て替えで新たに約2000万円のローンが加わり、毎月の返済額は15万円から23万円余りに跳ね上がる。小学2年と保育園児の息子が2人。妻(33)は「子供の人生を狂わせるわけにはいかない」と、パートを始めた。

 10月末、ようやく解体工事が始まった「GS藤沢」(神奈川県藤沢市)。間もなく定年を迎える会社員男性(59)は「ローンを払い続けられるのか」と不安を漏らした。ローンはこれまでの約2500万円に約1700万円が加わる。105平方メートルの自宅を分割し、25平方メートル分を「賃貸物件」にするが、それでも毎月の支払いは3万円余り増えるという。同マンションでは、他の6世帯も同じように部屋を分割する予定だ。

 国土交通省によると、元1級建築士・姉歯秀次受刑者(51)の偽装による強度不足が判明した分譲マンション31棟のうち、東京、神奈川の12棟の住民が退去を余儀なくされ、建て替えや大規模な改修を強いられた。

 売り主の費用で建て替える「ゼファー月島」を除き、破産した開発会社「ヒューザー」の物件の建て替えに伴う負担額は、1世帯あたり約1000万〜2000万円。世帯主の3割以上は50歳以上のため、親子2代でローンを組まざるをえないケースもある。

 10月に国や自治体などを相手に損害賠償請求訴訟を起こしたGS千歳烏山の住民の一人は、「再入居がゴールではない。抜け穴だらけの制度が放置された理由を、納得できるまで突き詰めたい」と話した。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081117-00000007-yom-soci