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2008年11月17日(月) 00時00分

名前・住所を公開、全国37校980人…グーグルマップ "公開"読売新聞

 インターネット上の無料地図情報サービス「グーグルマップ」で、名前や住所などの個人情報が誰でも閲覧できる状態になっていた問題で、小中高校などの教員らが誤って公開してしまった児童・生徒の個人情報が、全国で少なくとも37校の約980人分に上ることが16日、読売新聞の調査でわかった。

 一部のデータは削除しようとしても、閲覧可能な状態が続くことも判明。事態を受け、文部科学省は都道府県教育委員会を通じ、全国の教育機関に個人情報の扱いなどについて注意するよう指示した。

初期設定は「一般公開」

オリジナルの地図をつくれるグーグルマップ。国会議事堂を登録している利用者も多くいた

 誤って公開されてしまったのは、北海道、青森、千葉、埼玉、愛知、大阪、宮崎など21道府県の3幼稚園(34人)、15小学校(約420人)、15中学校(約390人)、4高校(133人)の個人情報。

 問題が起きているのは、ネット検索大手「グーグル」が提供しているグーグルマップの「マイマップ」機能で、昨年4月にスタートした。住所を打ち込むと、場所が検索でき、地図上に目印や名称、住所、コメントなどを書き込み、自分用の地図としてサイト上に保存できる。

 ところが、落とし穴となっているのがプライバシー設定。「自分用の地図」がうたい文句なため、自分だけが閲覧できると思いがちだが、初期設定は「一般公開」となっており、「限定公開」に変えないと、情報が不特定多数に見られてしまう。

 特に、情報流出の恐れが相次いで指摘されているのが、教員が家庭訪問のために作成した地図で、児童生徒の氏名や住所、電話番号までが閲覧できるものもあった。千葉県内の中学教頭(52)は「家庭訪問は年度当初に行われることが多く、土地カンのない先生は、生徒の家を探して歩くのはなかなか苦労するので、住所を打ち込むだけで訪問先一覧が出来るグーグルマップは便利」と話す。別の教員も「マイマップなら最短の訪問ルートもすぐ検索できる」と言う。

 登録した情報は「削除」ボタンをクリックすれば消える仕組みになっているが、「削除したはずなのに、まだ情報が閲覧できる状態になっている」との苦情も相次いでいる。

 愛知県瀬戸市の市立中学校の場合、今月5日、約15人分の生徒の名前や住所が記載された地図を削除したが、14日時点で再び一部が閲覧できる状態になっていた。宮崎市の小学校でも5日に削除の操作をしたのに、数日後に確認したところ、まだ残っていた。副校長は「教員は授業でもグーグルマップを活用していたが、タダより高いものはない」とこぼしている。

 グーグル広報の説明によると、利用者が登録した情報はグーグルの持つ複数のサーバーに複製される仕組みのため、一時記録が消えきらないケースがあるという。「要請があったものはできるだけ早く削除する」と釈明している。

 グーグルマップを巡るトラブルは、企業や病院などでも起きている。大手ゲームソフト会社「セガ」(東京都大田区)では、アルバイト採用の応募者115人分の情報が流出していたことが判明。名古屋市の病院の場合、人工透析の治療を受ける患者や、併設する介護老人保健施設のデイケアサービス利用者計80人分の氏名と住所、電話番号などが閲覧可能に。

 総務省固定資産税課でも、課内の緊急連絡用に作成した職員約30人の自宅住所の一覧が閲覧できる状態になっていた。

情報流出リスクの認識必要

佐々木良一・東京電機大学教授(情報セキュリティー)の話 「無料メールやスケジュール管理サービスなど、情報を業者のサーバーに預ける形で保管するサービスが増えており、ネット上への流出の危険性は高まっている。

 しかも、いったんネットに流出すると、次々とコピーされ、完全に消すことは難しい。利用する側もこうしたリスクを認識し、個人情報を慎重に扱うべきだが、グーグル側も、初期設定は『一般公開』にせず、公開の際は注意を促すなど、利用者への配慮が必要。情報を扱う者として、個人情報流出防止の方策に力を注ぐべきだ」

http://www.yomiuri.co.jp/net/security/ryusyutsu/20081117nt01.htm