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2008年11月16日(日) 17時46分

金融サミットで協調確認するも、日本に財政・金融政策打つ手なし産経新聞

 先進国と新興国20カ国・地域(G20)が参加する金融危機対策のための緊急首脳会議(金融サミット)が15日閉幕し、景気刺激のため財政・金融政策で協調姿勢を取ることが確認された。今後、日本は欧米と協調して機動的な金融・財政政策を打ち出すことが求められる。だが、日本は先進国でもワーストクラスの長期債務を抱える一方、金利水準も低く、効果的な施策を打ち出せるほどの余力は残っていないのが現実だ。

 日本は、2兆円の定額給付を柱とする事業規模約27兆円の追加経済対策を土産に今回の金融サミットに乗り込み、景気下支えに最大限の努力している姿勢をアピールした。 米国発の金融危機は実体経済に波及。米国では基幹産業である自動車産業が大きな痛手を受け、泥沼の様相を呈している。外需に依存する日本への波及も深刻で、トップ企業のトヨタ自動車が平成21年度決算が本業のもうけを示す営業利益が前期比で約4分の1に減る見通しだ。企業業績の悪化が雇用や消費に広がり、さらに景気を悪化させる懸念は強まっている。

 景気後退の懸念は各国共通で、ドイツは総額500億ユーロ(約6兆円)、フランスも1750億ユーロ(約27兆円)規模の財政出動を打ち出した。中国は4兆元(57億円)大規模な景気刺激策を発表。米国でもオバマ次期大統領が1000億ドル(10兆円)規模の対策を検討中だ。1929年の金融恐慌の再来を指摘する声が強まる中で、「負の連鎖」を断ち切る上でも今回のサミットでは、協調した財政・金融政策の必要性をアピールする必要があった。

 だが、日本が打ち出した追加経済対策に対する国民の反応は冷ややかだ。民間シンクタンクなどは柱となる定額給付の成長率の押し上げ効果は0・1〜0・2%程度しかないと分析する。むしろ財政悪化を懸念する声の方が強まっているようにもみえる。

 日本の長期債務は国と地方合わせて778兆円。景気低迷で税収増は見込めず、今年度の税収は大幅な落ち込みが確実だ。ユーロの統合で財政健全化を進めてきた欧州に比べても、新たな財政出動に踏み切る余力はない。

 金融政策も状況は同じだ。

 欧米が相次いで利下げに踏み切る中、日銀も歩調を合わせる形で10月末に政策金利を7年7カ月ぶりに0・2%下げ0・3%にした。しかし、すでに市中では1%台の低金利が続いており、住宅ローンの返済や中小企業の借り入れに与える影響はごくわずか。英中央銀行のイングランド銀行(ECB)が一気に1・5%も政策金利を下げたのに比べれば市場に与えるインパクトはあまりに小さい。

 日銀にとっては、次の政策対応で切るカードは少なく、金利政策で、欧米と協調的な歩調を合わせるのも難しい。

 財政・金融政策では、日本に致命的な影響が及ぶ前に欧米が立ち直るのを指をくわえて見守るしかないのが実情だ。財政・金融政策で協調路線がとれず、日本が世界から孤立しかねない懸念も高まっている。

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