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2008年11月16日(日) 16時33分

日本勢健闘 北米最大の映画見本市 舞台裏をのぞく産経新聞

 11月になると毎年、ハリウッドはビジネスで活気づく。北米最大の映画見本市「アメリカン・フィルム・マーケット」(AFM)が開かれ、次のヒット作、次代のスーパースターを見つけようと、世界中から目利きが押し寄せるのだ。まだまだ新興勢力ながら、日本勢もがんばっている。ふだんは目につかないハリウッドの舞台裏をのぞいてみた。(ロサンゼルス 松尾理也)

 太平洋を望むロス西方、サンタモニカに立つ高級リゾートホテルがAFMの会場だ。期間中は全館が貸し切りとなり、一般人の立ち入りはシャットアウトされる。

 一歩中に入ると、そこは「業界」の世界。所属する会社は違えど、同じ業界に属する顔見知り同士たちが、親しげにあいさつを交わし合う。

 AFMは北米最大の映画見本市で、2月のベルリン、3月の香港、5月のカンヌ、9月のトロントと並び、世界的な重要な映画マーケットのひとつ。米大手映画会社(スタジオ)系以外の、いわゆる独立系の秀作を求めて世界中からバイヤーが集まる。

 1階に、日本貿易振興機構(ジェトロ)がセールス・ブースを構えていた。「日本、そしてアジアへの関心はすっかり定着したといえます」と、ジェトロ・ロサンゼルスセンターの川本満実子さんは語る。作品そのものへの興味もさることながら、「あらゆるアイデアが出尽くした感のあるハリウッドは、貪欲(どんよく)に新しいアイデアを求めている。作品そのものが売れなくても、リメークという形でアイデアが受け入れられるという流れは、ここ数年のアジア発のホラー映画ブームでも証明済み」というわけだ。

 ジェトロのブースに隣接して、少女同士の愛を描いた日本映画「LOVE MY LIFE」(2006年)のセールスを行っていた「オープンセサミ」の阿部律子社長は「超ニッチ向けの映画ですが、小さいとはいえ、マーケットは世界中に確実にある。そうしたマーケットと、実際に顔を見ながらビジネスができるのがこうした見本市の意義」と話す。

 ただし、折からの金融危機で映画セールスの不振も伝えられる。日本からの主要な映画会社の担当者はほぼ口をそろえて、「廊下の人通りが、例年より圧倒的に少ない」と話し、売り込みに知恵を絞っていた。

 一方、11月8日にはハリウッドの有名映画館「エジプシャン・シアター」で、ハリウッド進出をめざす若手日本人映像作家によるコンテスト「ピクチャーバトル×ショービズ・ジャパン」が開かれた。

 ホラー映画を中心にハリウッドでメガホンを取る日本人クリエーターもぼちぼち現れつつあるものの、まだまだ日本人にとっては遠い世界でもあるハリウッド。そこに通用する才能の発掘をめざし、日本から井筒和幸監督らを招いて開かれたもので、予備選考を通過した7作品が上映された。

 最近の日本人クリエーターの間では、日本を経ずに直接米国デビューをめざすケースもめずらしくなくなりつつある。審査員特別賞を受賞したニューヨーク在住の高岡洋雄さん(39)は、「ロスで映画を勉強した後、ニューヨークでカメラマンをしている。日本での成功を経ずにハリウッドに進出するのは例がないが、ハリウッドで映画を撮ってみたいという思いは変わらない」と明るく話した。

 コンテスト後、実際に参加者の1人には審査員を務めた米国のプロデューサーからスカウトがあったという。

 不可能とされた野球のメジャーリーグへの日本人挑戦が今では当たり前になったように、日本人のハリウッドデビューがめずらしくなくなる日は来るのだろうか。コンテストの審査に当たった井筒監督は「毎年レベルは上がっている。来年が楽しみだ」と温かい言葉を残し、会場を後にした。

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