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2008年11月16日(日) 00時00分

真っ先にクビ 外国人恨み節読売新聞


職を求めてひっきりなしに訪れる外国人ら(名古屋市中区の名古屋外国人雇用サービスセンターで)
「一家の収入7割減」「結婚 先延ばしに」

 約4000人のブラジル人が暮らす愛知県豊田市の「保見団地」。午後5時すぎ、自動車や機械部品工場から帰宅する人々を眺めながら、自転車置き場の前で立ち話をしていた日系2世の主婦(45)は、「今月から一家の収入は一気に7割も減った」と嘆いた。

 2年前、同市で暮らしていた夫(47)のもとへ、長男(20)、長女(18)を連れてブラジルから来日した。夫、長男と同じ自動車部品工場で契約社員として働いていたが、先月末、長男とともに契約を打ち切られた。今は月30万円に満たない夫の稼ぎだけが頼りだ。

 「これまではスーパーでカートがいっぱいになるほど買い物をしていたし、週末には家族で外食もできた。今は電気や水も節約している。冬用の新しい服も買えない」。長男と職探しをしているが、新たな仕事はなかなか見つからない。「人を減らすなら、遅刻が多いとか仕事ができない人から切るべきよ。私は一生懸命働いていたのに」。恨み言が口をついて出た。

 自動車部品工場から帰宅した日系3世の男性(25)は、先月から月収が10万円近く減った。昼と夜で週6日働いていたが、先月、工場から「生産量を減らすので、もう夜勤や残業はしなくていい」と指示され、勤務日が週4、5日に減った。

 「近いうちに婚約者と一緒にブラジルに戻り、結婚生活を始めるつもりだったけど、あと2年はこのまま頑張らないと。工場は僕らより時給の安い中国人が多くなってきた。日本の景気はいつ上向くんだい?」

 外国人の就職を支援する名古屋外国人雇用サービスセンター(名古屋市中区)には、職を求めて外国人が続々と訪れていた。

 今年4月にはセンターに計507人あった愛知県内の求人数は、10月には248人に落ち込んだ。一方で、同月に相談した求職者は489人と4月の倍近くに増えた。「求人数が減っている上に、日本語や漢字の読み書きができることを条件にする企業が増え、さらに狭き門になっている」と相談員は話す。

 センターで職探しをしていた名古屋市西区のブラジル人女性(37)は、今月7日に自動車関連の工場から契約打ち切りを宣告されたばかり。残業を含めて1日12時間前後働いていたが、「トヨタも厳しい。申し訳ない」と切り出された。「自分の生活も苦しいし、ブラジルに住む妹はまだ大学生で学費もかかる。何でもいいから早く仕事が欲しい」と不安そうだ。

 同市港区の男性(55)と女性(49)の日系ブラジル人夫婦は1年ほど前、派遣社員として3年勤めた機器製造工場をそろって辞めた。残業がなくなって収入が減ったからだが、「今思えば辞めなければよかった。この年齢で、しかも外国人での職探しは厳しい」。男性はため息をついた。

 外国人を支援するNPO法人「交流ネット」(愛知県一宮市)の理事長・林隆春さん(58)は、「外国人は不況になると真っ先に契約を切られ、職とともに住居も失う場合も少なくない。帰国して暮らしていける人はごくわずか。立場が弱い彼らの生活や命をどう守っていくのか、もっと多くの日本人が関心を持つべきだ」と話している。

http://www.yomiuri.co.jp/national/kishimu/kishimu081116.htm