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2008年11月16日(日) 23時35分

<金融サミット>「米一極」の転換期毎日新聞

 「IMFでの新興国の発言権を拡大すべきだ」(中国の胡錦濤国家主席)

 「米国発金融危機の最大の被害者は新興国だ」(インドのシン首相)

 新興国首脳が米国主導の国際金融体制を公然と批判した事実が、金融サミットの歴史的な意味を物語る。米国への不満を持ちながら表に出すことが少なかった欧州勢も、サルコジ仏大統領を筆頭に「米国流」の修正を要求した。米国を軸に回ってきた世界経済の秩序は金融危機で大きな転機を迎えている。

 米国発の金融危機にどう対処するかが最大のテーマだった金融サミットを主導した欧州と新興国は、サミット前からヘッジファンドや格付け会社への規制強化・拡大を要求。これに対し、ブッシュ大統領はサミット直前まで「自由な市場は経済繁栄のエンジン」と抵抗していたが、会議で噴出した米国批判の前に、妥協せざるを得なかった。

 首脳宣言には総論的とはいえ、広範な規制強化が盛り込まれ、米国流の市場原理主義は修正を迫られる形になった。サルコジ大統領は「世界経済の危機に対処するため、先進国と新興国が初めて一致した歴史的会議」と高揚感を隠さなかった。首脳宣言は「いくつかの先進国は、高利回りを求める不健全なリスク慣行など市場に積み上がったリスクに対処しなかった」とも指摘。国際金融を大混乱に陥れた米国が名指しに近い形で断罪された。

 世界不況の回避でも、米国を中心に先進国経済が軒並みマイナス成長に沈む中、世界経済の下支えは新興国頼みにならざるを得ない。世界経済は、米国一極集中から、多極化の時代へ向かいつつある。【ワシントン清水憲司】

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