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2008年11月16日(日) 02時30分

<厚生年金>給与一部を旅費扱い、保険料削減…福岡の会社毎日新聞

 経営者が社員の給与の一部を出張旅費扱いにして厚生年金保険などの算定基準となる標準報酬月額を引き下げ、保険料をほぼ半額に抑えた例が社会保険庁に報告された。会社と従業員で折半する保険料が減った代わりに、社員が老後に受け取る年金も減ることになる。年金を巡っては意図的な標準報酬月額改ざんが相次いで発覚し、社保庁が調査に乗り出しているが、給与の一部を出張旅費に事実上移し変えて保険料の減額を図るケースが判明したのは初。他の事業者でも行われている可能性があり、同庁は詳しい事情を調べる。

 会社は福岡県八女市の運輸関連業者。同市内の運送会社の子会社として04年11月に設立された。親会社の運転手ら約100人が移籍したが、移籍後も派遣社員として、元の勤務先で以前と同じ仕事をしているという。

 移籍後は給与体系が変わり、運転手として働く男性社員(59)の場合、移籍直前の給与は月額22万円だったが、移籍後は12万円になり、代わりに「出張旅費」が毎月約10万円支給されるようになった。現在、「出張旅費」は月支給分の3分の1程度。

 男性のケースでは、給与から天引きされていた厚生年金保険料約1万7000円と健康保険料約1万1000円が、変更後は半額から7割になった。会社の負担額も、この男性だけで最大時月額約1万3000円減ったことになる。

 社保庁によると、年金の標準報酬月額の算定基準となる「月給」には、本給などのほか残業手当や通勤手当なども含まれる。出張旅費については、従業員が宿泊費などを立て替え、相当分を会社が実費弁償した場合は含まれない。しかし男性によると、同社では宿泊を伴う長距離輸送も基本的に車内泊で、宿泊費などの立て替えはほとんどないという。

 久留米社会保険事務所(同県久留米市)が男性の指摘を受けて調査しており、同事務所を管轄する福岡社会保険事務局運営課は「出張旅費が労務の対価であれば、給与に含めなければならない。確認されれば是正を指導する」としている。

 毎日新聞の取材に対し、同社の親会社の社長は「従業員の手取りを増やす目的で(子会社に)移籍させる前、労働組合の委員長らにも相談して今の給与体系になった。税金対策の一環。希望があれば元通りにするが、希望する従業員はほとんどいない」と話している。【斎藤良太】

 【ことば】標準報酬月額

 厚生年金保険料の算定基準となる額。9万8000〜62万円の30等級あり、毎年4〜6月の平均給与額とおおむね同じ額の等級に当てはめる。これに15・35%をかけたものが保険料になり、本人と会社が折半する。給与に比べて保険料が著しく低い場合、意図的な保険料の減額が行われている可能性がある。

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