記事登録
2008年11月16日(日) 21時19分

「米国の裏庭」で積極外交 胡主席、中南米訪問 途上国に貢献の「大国」誇示産経新聞

 【北京=野口東秀】中国の胡錦濤国家主席は16日、コスタリカ、キューバ、ペルーなど4カ国の歴訪を始めた。米国が警戒感を強める中で中国が中南米に対し積極的な外交を展開する背景には、「金融危機の影響を受けた途上国の発展に貢献する」(中国政府筋)“大国”としての存在感を国際社会に示す狙いがある。資源価格の低下などを投資のチャンスともとらえているとみられる。

 胡主席は、議長国を務めた北京でのアジア欧州会議(ASEM)に続き、15日まで米国で開催された緊急首脳会合(金融サミット)でも存在感をアピールした。

 26日までの4カ国歴訪では、ペルーで22、23日に開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議にも出席する。胡主席の中南米歴訪は、2004年のブラジル、アルゼンチン、チリ、キューバ歴訪、05年のメキシコ訪問に続くものだ。

 中国はキューバについて「外国の干渉に反対する正義の闘争を支持する」(外務省)との立場で、1993年と2001年に江沢民前国家主席、04年に胡主席が訪問するなど、経済援助を通じ影響力を増加させている。

 中国は今月初旬、協力拡大などを盛り込んだ初の中南米白書を公表したほか、先月下旬には同地域の開発促進を目的とする米州開発銀行(IDB)への加盟を発表、キューバなど中南米諸国との経済関係強化に一層拍車がかかる見通しだ。

 中国と中南米地域との貿易額は、1999年に約80億ドルだったが、昨年には約1000億ドル超に膨張。ベネズエラやエクアドルの石油、ブラジルの鉄鉱石、アルゼンチンの大豆、チリの銅など、自国の経済発展に不可欠な戦略資源の輸入を拡大している。港湾、道路などのインフラ整備への投資も顕著で、相手国の経済活動にも恩恵を与えている。

 中国が中南米に積極外交を仕掛ける背景には、存在感の誇示や「多方面で安定的な資源確保」(中国政府関係者)のほか、台湾外交の牽制(けんせい)、軍事・諜報活動の協力強化などが指摘されている。

 こうした中国外交に対し、米国では下院外交委員会などで懸念が高まっているが、中国・中南米学会の江時学副会長は「国際金融危機は、中国と中南米地域との関係強化に新しいチャンスをもたらす」との期待感を示しており、中国はさらに深く食い込む勢いをみせている。

【関連記事】
中国、途上国、新興市場の発言権強化に照準
新秩序へ“一歩”も残る火だね
金融サミットで協調確認するも、日本に財政・金融政策打つ手なし
金融サミット ブッシュ大統領声明「原則と行動で合意」
金融サミット閉幕 共同宣言・行動計画発表、金融市場改革で一致

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081116-00000551-san-int