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2008年11月16日(日) 21時13分

金融危機 NY文化を侵食? 高級レストランやオークション産経新聞

 【ニューヨーク=長戸雅子】金融危機が美術品のオークションや高級レストランでのパーティーなど“ニューヨーク文化”に影を落としている。ウォール街が牽引(けんいん)してきた華やかな消費文化は当面、期待できないともいわれている。

 「まるで半額セールだ」

 競売大手、サザビーズが11日に行った現代美術のオークションには、アンディ・ウォーホールらの作品63点が出品されたが、約3分の1にあたる20点が売れ残り、総落札額は1億2510万ドルと、予想された2億240万ドルをはるかに下回った。

 目玉のひとつとされた、イブ・クラインの絵画は予想落札額2500万ドルを下回る2100万ドル、「グレート・アメリカン・ヌード」などで知られるトム・ウェッセルマンの作品にいたっては、600〜800万ドルの予想落札額に対し410万ドル。ウォーホール、ロイ・リキテンスタインらの1部の作品は買い手がつかなかった。

 サザビーズの関係者は「金融危機の影響は確かにあるが、投機マネーが入り込んだこれまでの価格が高すぎただけ。今の状況は通常に戻ったともいえる」と話す。

 競売大手、クリスティーズが12日夜に行った現代美術のオークションでは、世界文化賞受賞者の草間弥生さんの抽象画が予想の倍近い580万ドルで落札されたが、総落札額自体は予想(約2億3000万ドル)の半額(約1億1400万ドル)にとどまった。

 ウォール街を抱え、米国の消費文化を象徴する街・ニューヨーク市の景気の落ち込みは数字にはっきり示されている。

 “米国版日銀短観”といわれるISM(全米供給管理協会)指数は50を景気拡大・下降の分岐点としているが、10月末時点でのニューヨーク市のISM指数は35・6で3カ月前より21%ダウン。前年同時期は59だったことを考えると、金融危機に直撃された格好だ。

 世界各地で発行されているレストラン・ガイド「ザガット・サーベイ」の共同創設者、ザガット夫妻が金融危機後に全米の4万5000人に行った調査では、3分の1が外食を減らし、28%がより安いレストランへ行くと回答した。

 市内でのレストランの新規開店数も昨年の7割程度で、「金融危機の短期的な影響はすでに出ている。(破(は)綻(たん)した米証券大手の)リーマン・ブラザーズやベアー・スターンズが(派手な)ホリデー・パーティーをやるようなことはもうない」(ザガット夫妻)という。

 レーガン氏ら米歴代大統領にも愛された、ニューヨーク市の高級フレンチレストラン「ル・サーク」の共同オーナー、ムーロ・マッチオーニ氏は、10月の売り上げが通常の10%減だったとしたうえで、「大切なのはどんなときでも料理とサービスの質を落とさないこと。来年も厳しい状況が続くと思うが、私たちは30年以上もここでやってきたのだから乗り切れる」と、自負をみせた。

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