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2008年11月16日(日) 20時53分

中国、途上国、新興市場の発言権強化に照準産経新聞

 【ワシントン=山本秀也】金融サミットに出席した中国の胡錦濤国家主席は15日の演説で、国際金融システムの改革を進める中で、新興市場を含む発展途上国の「発言権強化」を求める方針を表明した。米欧主体で構築された戦後の金融体制が、今回の金融危機で転換期に踏み込んだとの判断によるもので、先進国に対しては、金融市場の安定化で「あるべき責任と義務を果たすべきだ」と求めた。

 胡氏のサミット演説は、国際協調による金融危機の克服を訴えつつも、途上国の権利拡大を先進国に迫る中国外交の基本パターンを金融問題で持ち出した形だ。今後本格化する金融秩序の再構築をめぐる議論で、世界トップの外貨準備高など経済力を誇る中国が新興市場の雄として、より高い地位を求める戦略が浮かび上がった。

 金融危機の原因について、胡氏は「不適切なマクロ経済政策と、金融管理の失敗が原因」として、ウォール街発の金融危機を引き起こした米国の金融政策を暗に批判。「危機が途上国に与える損害を極力抑えるべきだ」として、途上国向け融資の条件緩和や対外債務の減免などを先進国に求めた。

 中国自身の取り組みとしては、さきに表明した総額4兆元(約57兆円)の景気刺激策を挙げて、「中国経済の発展は世界経済の発展を促す」と見えを切ったが、国際通貨基金(IMF)への支援増額などでは具体的な言及を避けた。

 IMFへの支援表明を見送ったことについて、中国筋は「世界銀行傘下の貿易融資プログラムには積極的な関与姿勢をサミットで表明した。中国国内での景気刺激策も、海外企業の対中投資には有利な貢献ではないか」として、麻生太郎首相が記者会見で失望感を示したことに反論している。

 中国は危機の克服で「早急な対応」を呼びかける一方、金融秩序の再編では「段階的な改革」を求める慎重姿勢もみせる。改革・開放路線への転換から30周年目に遭遇した難局で、先行きを読みきれない不安感も中国は抱え込んでいるようだ。

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