記事登録
2008年11月16日(日) 20時38分

金融サミット 新秩序へ“一歩”も残る火だね産経新聞

 米欧日の先進国と新興国の20カ国・地域(G20)の首脳が集った金融サミットは、「市場への適切な規制」と「新興国の発言力拡大」という新しい国際金融秩序に向け、“一歩”を踏み出した。だが、「自由」にこだわる米国と「規制」を求める欧州の溝はなお深い。経済がガチガチの規制にしばられ、各国が自国経済を優先する保護主義が台頭すれば、日本も大きな不利益を受ける。方向性は示されたが、具体的な枠組みの姿は、おぼろげにしか見えてこない。

 「提案のすべてが首脳宣言に含まれた」

 欧州連合(EU)議長国のフランスのサルコジ大統領は、会見で高らかに“勝利”を宣言した。

 首脳宣言は「適切な規制」と「自由市場の堅持」の両論併記で、欧米の対立を回避したが、中身には随所に欧州の主張が色濃く反映されている。

 その象徴が、マネーゲームで市場を混乱させたヘッジファンドと、複雑な金融商品を適切に評価できず泥沼の損失を招いた格付け会社への規制強化だ。サルコジ大統領は「アングロサクソン(米英)の世界では決して同意されなかった」と胸を張る。

 金融危機の原因をめぐっても、米国は「政策の失敗による責任を事実上認めた」(サミット交渉筋)。その結果、米国は、危機が波及した新興国にも“謝罪”する形となり、自らの権限低下につながるIMF改革を受け入れた。

 経済の急成長で先進国が存在感を増す一方、同時不況で先進国の地位低下に拍車がかかるなか、従来のG7(先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議)の枠組みは「制度疲労」を起こし、もはや対応できない。

 「G20の枠組みこそが国際金融システムの中枢を担うべきだ」(ロシアのメドベージェフ大統領)。新興国は気勢をあげる。

 今回のサミットは「100年の1度の大津波」を前に、結束を保つことができた。だが、規制の網のかからないヘッジファンドをどう監督するのかなどの具体論は先送りしたほか、保護主義の排除と規制の両立という困難な課題には踏み込んでいない。

 ブッシュ大統領は「市場を損なうことなく健全な規制を構築することが課題だ」と語り、米国の自由市場へのこだわりの強さをうかがわせた。新興国の発言力強化でも、「今回の金融サミットがG7の代わりになるとは思っていない」(日本の財務相幹部)と温度差がある。

 規制やIMF改革の具体論を積み上げ、新秩序を構築していく中で、ほころびが露呈する懸念はぬぐえない。G20の真の結束が試されている。(ワシントン、坂本一之)


 

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081116-00000545-san-bus_all