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2008年11月15日(土) 08時00分

【Re:社会部】おつかれさまでした産経新聞

 東京、平日深夜の地下鉄車内でのことです。

 仕立てのいいスーツ、しっかりと磨かれた靴、背筋を伸ばしたナイスな熟年紳士が、つり革につかまりながら、紙袋から取り出した1枚の色紙を見つめていました。

 中央に大きく「○○専務 ありがとうございました」。その周りに字体の違う、所々蛍光ペンも使った書き込みがびっしりあるのが少し離れたところからでもわかりました。

 ○○には姓の漢字が入っていて、退職か転勤する専務さんへの寄せ書きなのでしょう。その紳士が専務で、送別会で寄せ書きを贈られた帰りと見ました(間違っていたらごめんなさい)。

 もちろん色紙をのぞき込む権利も勇気もなく、細かい文章はわかりません。ただ、色紙全体から立ち上る雰囲気、それを他の乗客を気にすることなく、隅々まで熟読する紳士の姿から、色紙を贈った人たちと、贈られた専務の間にあった思いの濃さが伝わってきて、「いい上司だったのだろうな」と思わされました。

 電車内の風景といえば、ケータイでメールやサイトをチェックする人の姿が目につく昨今、こんなぬくもりのある場面に何だかホッとします。

 下車していく紳士に思わず独り言が漏れました。

 「おつかれさまでした」(葉)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081115-00000097-san-soci