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2008年11月14日(金) 17時25分

なぜ香港の工事現場は、竹で足場を組むのか?Business Media 誠

 記者が子どものころ、香港に行った人の土産話として“定番”だったものが2つある。

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 1つは「建物の屋根すれすれを飛行機が飛んでいくんだよ」というもの。香港の空港(啓徳空港)は街の中心部からすぐ近くにあったためだが、中国に変換された1998年に新しい国際空港が大嶼山(ランタオ島)に開業。街の中心部からの距離はだいぶ離れたため、現在ではこの話題が出ることはなくなった。

●建築工事の足場を竹で組む理由

 もう1つは「ビルを建てるとき、足場が竹でできている」という話。こちらは2008年の今も健在で、今回記者も香港で何度となく目にした。この話題は「香港ではほとんど地震がないから、竹で組んだ足場で大丈夫なのだ」という話と必ずセットで、「地震がないとはうらやましい」と子供心に思ったのを覚えている。

 香港では街のあちこちで建築工事を行っているが、その足場を鉄パイプや鉄板ではなく、竹で組むのが一般的だ。超高層ビルの場合も同様。建てかけの高い建物のまわりを竹が網のようにぐるりと取り囲み、竹で組んだ足場を作業員(日本なら「とび職」?)がひょいひょいと歩いている。

 なぜ鉄ではなく、竹を使うのだろうか? 最大の理由は「安いから」。同じ長さの竹と鉄パイプでは、値段が5倍以上違うのだそうだ。香港では中国から竹を輸入しており、長くて質の良い竹材を安価に入手できる。

 また、竹は軽いので、運ぶのも組み立ても解体もラク、という理由も大きい。竹を荷台に積んだトラックを見かけたが、荷の積み方もかなりおおざっぱだった。確かに鉄板や鉄パイプがトラックから転がり落ちたら大惨事だが、竹なら大した騒ぎにはならないだろう。

 もう1つ、高温多湿な香港では鉄がさびやすいという理由もありそうだ。竹はむしろ湿気を帯びることでよく締まり丈夫になるという。香港で竹の足場を使うのには、ちゃんと理由があったのだ。

 面白いのは、専門の職業訓練校があるということ。竹の足場(竹柵・ジョンパン)を組める職人になるには、国が定める一定のコースを履修しなくてはならない。

 基礎技術の習得に約1年。理論の授業を1週間受けて、1カ月程度地面で練習したのち、高いところに登って実践練習を行う。竹柵職人は一般の建築作業員に比べても賃金が高く、人気の職業なのだそうだ。

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