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2008年11月14日(金) 13時02分

神奈川21世紀の会:「これからの社会と司法」 樋渡検事総長が講演 /神奈川毎日新聞

 異業種間の交流から地域の発展を目指す「神奈川21世紀の会」(毎日新聞社主催)第61回講演会が13日、横浜ロイヤルパークホテル(横浜市西区)で開かれた。第1回から10年目の節目に、樋渡利秋・検事総長が「これからの社会と司法」と題して講演。裁判員制度をはじめとする司法改革の必要性を、国際関係など幅広い視点から訴えた=写真、高橋直純撮影。
 樋渡総長はバブル崩壊後に規制緩和が進み、自由競争の行き過ぎが事件を誘発した経緯を、ライブドア事件を挙げて説明。「事後監視型社会における法の徹底が必要だ」と述べた。また国際競争と国際貢献の側面から、法律家の養成、他国の法整備支援の重要性を訴えた。
 裁判員制度については「司法の機能は多角的なのに、日本では国民にとって遠くにある」と述べ、制度により司法が身近になることの意義を強調。「熟成した法治国家として日本が発展してほしい」と締めくくった。
 樋渡総長は45年、兵庫県出身。東大法学部を卒業後、東京地検検事、最高検検事、法務事務次官、東京高検検事長などを経て、今年7月に検事総長に就任した。
 講演後の懇親パーティーでは、羽田慎司県副知事と阿部守一横浜市副市長が祝辞。南谷修・鹿島建設常任顧問の乾杯で歓談し、横浜バロック室内合奏団の2人がバイオリンの気品高い音色を響かせた。【池田知広】
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 ◆要旨
 ◇司法が健全に機能する社会に
 幕末の日本に来た外国人は治安やマナーの良さに感心していた。近代的な司法制度は治安維持のためではなく、外国との関係の中で取り入れられた。戦後も、刑法犯は米国と比べると人口比で5分の1くらいだった。
 ところが、最近の日本社会は一変した。国民が治安に不安を持つようになった。刑法犯は02年には280万人とピークに達した。このような状況で、政府は世界一安全安心な国という方針を掲げ、成果も出ている。
 ではなぜ今、司法制度改革なのか。日本はバブル崩壊後、規制緩和による行財政改革に突き進んだ。事後監視型社会になり、社会は何でもありになった。ルール違反者には厳しく対処しなければならない。「法の支配が必要」とする97年の行政改革会議の最終報告を受け、改革が始まった。
 国際的にも司法の役割が大きくなる。国際競争上、どの国の法に準拠するかが重要となるが、世界の法律家は8割がアングロサクソン。今の日本は決して弁護士は多過ぎない。だから法科大学院が必要になった。法整備支援という国際協力も大切だ。貧しい国でも良い統治がないと平和な世界につながらない。
 「裁判ざた」という言葉があるように、日本では裁判にマイナスイメージが強い。裁判員裁判で、多角的な機能を持つ司法を身近に感じ、その重要性を分かってほしい。世間の耳目を集める事件に立ち会い、裁判を肌で感じてもらいたい。司法が健全に機能することが社会で最も大切だ。【高橋直純】

11月14日朝刊

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081114-00000082-mailo-l14