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2008年11月13日(木) 02時30分

<食品偽装>54件業者名公表せず 23都道府県毎日新聞

 食品の偽装表示を巡り、23都道府県が指導で済ませた54件は、日本農林規格(JAS)法に基づく改善指示と業者名公表が必要だったことが、農林水産省の調べで分かった。農水省は地元業者への配慮から甘い対応になったとみて各都道府県に改善を求めた。今後の事例でも事前の指導を強化する。専門家からは「地域により対応が分かれ、消費者に知らされないのは問題だ」と批判の声が上がっている。

 産地や消費・賞味期限などの表示でJAS法違反が確認された場合、事務所などが複数の都道府県にまたがれば国が改善を指示、一つの都道府県内だけなら知事が指示し、いずれも業者名を公表する。国は指針で「常習性がなく過失による一時的な場合は指導をする」と定めている。

 農水省は、JAS法改正で罰則が強化された02年7月から今年10月までの間、知事らが改善指示・指導をした食品の偽装表示の事例420件を調査した。

 その結果、366件は業者に改善指示を出し、業者名も公表していた。だが、残り54件も、指針に照らせば改善指示と業者名公表とする事例だったのに、指導で済ませていた。

 さいたま市の業者が台湾から輸入したウナギを、愛知県一色町の漁協が国産と偽装表示し販売した事例では、同市は今年6月、輸入業者に改善指示を出し業者名を公表した。一方、愛知県は漁協を指導にとどめ、漁協名も公表しなかった。

 北海道の水産加工業者などによる冷凍イクラの賞味期限改ざん(06年4月)や、福岡市の料理店がアブラボウズを「クエ鍋セット」とした偽装表示(今年3月)でも、北海道や福岡県は改善指示をせず、指導にとどめた。

 愛知県や福岡県の担当者は「偽装は故意ではなかったため指導した」と釈明する。農水省は「地元の生産・販売業者に配慮し対応が甘くなった」とみている。【奥山智己】

 食品問題に詳しい垣田達哉・消費者問題研究所代表の話 同じ法律なのに対応が統一されていないのは問題だ。偽装表示でもうけた業者が守られれば、正直に表示した業者がばかを見る。違反業者が得をするのを許すことになりかねず、消費者のことを考えていない対応だ。

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