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2008年11月13日(木) 10時03分

<前航空幕僚長>憲法改正論にまで踏み込む「田母神論文」の危うさ(2) 現代史家・秦さん「低レベルで不快」毎日新聞

 ◇現代史家・秦郁彦さん「低レベルで不快」

 さて、その田母神論文の概要を改めて紹介しよう。日中戦争、太平洋戦争は当時の国際共産主義運動を担ったコミンテルン(1919年創設の国際組織)によって引き起こされたとする“陰謀史観”を披露。旧満州や朝鮮半島の植民地支配について、「我が国が侵略国家だったなどというのは正に濡(ぬ)れ衣(ぎぬ)だ」と主張し、集団的自衛権行使や武器使用の制限を念頭に「自衛隊は雁字搦(がんじがら)めで身動きできない。(戦争責任をすべて日本に押しつけようとした)マインドコントロールから解放」されなくてはならない、と説いている。政府として近隣諸国の植民地支配と侵略を謝罪した95年の「村山談話」を真っ向から否定する内容である。それどころか田母神氏は11日、「村山談話は言論弾圧の道具」と言い切ってみせた。

 現代史家の秦郁彦さんはこの日の発言を踏まえ、あきれたように話す。

 「マンガ的な低レベルのやりとりで不快でした。肝心の国防について、『これでは国を守れないから困る』といった注文が出ているわけでもない。戦争を巡るコミンテルン陰謀説は、徳川埋蔵金があるとかないとかいったレベルの話です。懸賞論文で最優秀賞を取ったのが不思議でならない。『村山談話』への挑戦とも言われているが、論文には『む』の字もない。本人は『そんな談話あったかな』といった程度の認識でしかないのでしょう」

 要は内容が稚拙すぎるというのだ。けれども、秦さんは過剰な反応を戒める。

 「戦前の日本のシステムと比べれば、今は抑えが利く状態。二、三十年前まで聞かれたクーデターへの不安の声も今はない。総司令官である総理大臣と防衛大臣がしっかりすれば、自衛隊が独走し政治権力を握ることはないだろう」

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