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2008年11月12日(水) 20時22分

音声コード普及進まず 文書読み上げ装置対応読売新聞

視覚障害者「せめて個人情報は」
音声コードを読み取る活字文書読み上げ装置

 文字情報を記憶したデータコードを読み取って音声で聞くことができる視覚障害者用の「活字文書読み上げ装置」の使用が広がっている。しかし、このコードを付けた文書は少なく、視覚障害者からは「健康診断の結果など、親しい知人でさえ、読んでもらうには抵抗を感じる文書がある。せめて個人情報にはコードを付けてほしい」との声があがっている。

 この装置は、約2センチ四方の複雑な模様をしたコードを読み取り、音声に変換するもので、2003年に厚生労働省の日常生活用具の指定を受け、普及し始めた。音声コードには約800字分の情報を記録できる。

 日本視覚障がい情報普及支援協会(東京都新宿区)によると、読み取り機は、1台約10万円するが、自治体の9割補助があり、県内でも約150台購入されているという。

 普及の背景には、病気などで高齢になって失明する人など、点字を読めない人が増えている現状がある。県内に視覚障害者は約6400人いるが、県点字図書館(福島市)の利用者の9割は、点字でなく、録音図書を利用しているという。

 このため、音声コードは「紙上のバリアフリー」と期待されている。音声コードの作成には、有料の専用ソフトが必要だが、1万円以内で購入でき、ダウンロードなど比較的簡単な作業で済むため、同協会の能登谷和則副理事長は「点字作成よりも、技術もコストもかからない」と話す。

 これまで、企業が宅配ピザのメニュー表にこのコードを付けたり、国民生活センターが、悪徳商法への注意呼びかけに使ったりと、全国的に広がりつつある。

 しかし、県内では、棚倉町のボランティア団体「スピーチ・フリークラブ」が同町の広報誌「広報たなぐら」に音声コードを付けて提供しているほか、県生活環境部人権男女共生課のバリアフリー情報、県議会の議員紹介パンフレットなどがあるものの、まだまだ少ない。

 県盲人協会(福島市森合町)の寺井和子相談員は「音声コードが普及しないため、装置を買っても意味がないという利用者がおり、装置の普及妨げになっている」と指摘する。視覚障害者の中には、一人で生活している人も多い。特に、通帳の残高や年金記録、健康診断の結果など個人情報については、「簡単に周囲の人に読んでもらうわけにはいかない」という声があがっているという。

 寺井さんは「せっかく機械の普及が進んでいるので、コードが少しずつでも広がっていってほしい」と話している。

http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/fukushima/news/20081111-OYT8T00779.htm