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2008年11月12日(水) 00時00分

パソコンで操作できる天体望遠鏡読売新聞

Sky WALKER New SW-III PC(ケンコー)

望遠鏡を支える架台(マウント)には赤道儀式を採用。星の動きに対して赤経ハンドルで調整しながら星を捉えつづけることができる

 月面や土星の環、木星の縞模様、衛星などを観測できる天体望遠鏡だ。天体観測の入門者にもわかりやすい、天体望遠鏡ガイドブックと星座早見表が付属する。

 天体望遠鏡には、レンズで光を集めて像を作る「屈折式」と、ガラスの表面をメッキした反射鏡(凹面鏡)で光を集めて像を作る「反射式」がある。主な違いは、以下の通り。

 「SW−III PC」が採用する屈折式は、色彩のコントラストがハッキリとし、鏡筒内に発生する気流の影響を受けにくいために、ベランダに出したらすぐに天体観測を始められる、というのが最大の特徴だ。一方、反射式は、外気温に慣らしてからでないと、十分な観測ができない。

 ただし、同じ価格帯で鏡筒の先端に付いているレンズの口径を比較した場合、反射式の方が口径は大きい。天体観測では口径が大きいほど倍率が高く、よく見えるため、この点では反射式に分がある。また、反射式の方が重量が軽く、持ち運びが便利だというメリットもある。

 どちらが良いと一概には言えないが、自宅のベランダから夜空を眺めるのであれば、安定したクリアな像を気軽に楽しめる屈折式がお勧めだ。

3種類のアイピースが付属

新開発のデジアイピースをパソコンと接続すると、デスクトップで天体観測が行える

 天体望遠鏡の倍率は、鏡筒のレンズの反対側(人が覗き込む方)のアイピース(接眼レンズ)を付け替えることで調整する。

 「SW−III PC」には、天体全体(特に月面全景、星雲、星団)の観測に適した「RK20mm」(倍率/35倍)、月面の拡大、土星、木星の観測に適した「K12mm」(同/58.3倍)、惑星、二重星の観測に適した「K4mm」(同/175倍)と、3種類のアイピースが付属している。

 また、アイピースから覗いて見える天空の範囲はとても狭いため、目標の天体をとらえにくい。そこで、倍率が低く、広い視野を持つファンイダー(写真で鏡筒の上に取り付けられている小さなスコープ)が付属する。まずはファインダーで目的の天体をとらえ、主鏡筒で観測する。

 なお、天体望遠鏡(凸レンズ)で見る像は、天地が逆さまの倒立像になるのが一般的で、これはカメラや目の網膜と同じ原理。正像にするにはプリズムなどの光学部品が必要になるのだが、これを使うとせっかくレンズで集めた微弱な光を若干失うことになる。光の減少を最小限に止めるために、あえて倒立像のままにしているわけだ。

 しかし、日中に地上を観測するような場合には不便なため、正像にするためのエレクティングレンズ(倍率/1.5倍)も付属する。

パソコン画面で観察

付属ソフト「AMCAP」で表示中の月面の像。クレーターなどもハッキリわかる

 「SW−III PC」には、30万画素のCMOSセンサーを搭載する、新開発のデジアイピースが付属する。

 アイピースの代りにデジアイピースを装着し、パソコンとはUSBケーブルで接続。専用ソフトの「AMCAP」を起動すると、デスクトップ上で天体を鑑賞できる。これは、家族で天体観測をしたいときなどに利用すると便利だ。

 また「AMCAP」では、動画(AVI形式)の撮影も行える。オプションの設定で、露出や画質の調整も可能だ。市販のデジタルカメラ用編集ソフトを利用すると、静止画も撮影できる。

 なお、対応OSはWindows98/98SE/Me/2000/XPのみで、ビスタには対応していない。

 これから冬にかけ、空気が澄んで天体観測には最適な季節になる。ときには、遙か彼方の天空に想いをはせ、天体観測を楽しんでみてはいかがだろうか。(テクニカルライター・小野 均)

発売ケンコー http://www.kenko-tokina.co.jp/ 価格1万9800円 天体望遠鏡の種類屈折式 架台赤道儀 倍率K4mm:175倍/K12mm:58.3倍/PK20mm:35倍 対物レンズ/主鏡有効径70mm 焦点距離700mm 口径比1:10 極限等級11等星 集光力100倍 分解能2.0秒 ファインダー6倍25mm

http://www.yomiuri.co.jp/net/column/digimono/digimono081111.htm