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2008年11月12日(水) 16時17分

【元Vシネ女優2回公判ライブ】(12)「『私が刺した』は彼に失礼」…「刺した」と聞いたのは警察から産経新聞

 《静まりかえった法廷の中で、憂いのある木村衣里(えり)被告の声が響く。刺したのは衣里被告なのか、否か−。衣里被告は検察官の問いにどう答えるのだろうか》

  ■写真&法廷ライブ■ 元Vシネ女優の傷害致死事件〜公判の全記録

 検察官「最後に確認します。あなた自身が(藤家英樹さんを)刺したのではありませんか?」

 衣里被告「その一点にかかっているのですが、私の中では何があったのか分からないという表現しかできません。もし、刺したのであれば、私の口からご説明しなければなりませんが、中途半端に『私が刺した』と、この法廷で私がいうのは彼に対しても失礼だと思います」

 《衣里被告は正面の秋葉康弘裁判長を見据え、しっかりとした口調でこう訴えた。ここで検察官による被告人質問は終わり、裁判官からの質問に入った》

 裁判官「あなたは藤家さんをアントウさんと呼んでいますが、それはなぜですか?」

 衣里被告「アントウというのが彼の若い頃からのニックネームだったようで、『アントウさん』とここ10年、呼んでいます」

 《11日の初公判では、衣里被告が藤家さんのことを「アントウさん」「アントンさん」などの愛称で周囲に紹介していたことが明らかにされた》

 裁判官「あなたは先ほど、玄関先に鍵は一つと言っていましたね」

 衣里被告「家の中には一つだけです」

 裁判官「藤家さんが帰る時には、その鍵は持ち出さないのですか?」

 衣里被告「帰るときには持ち出しません」

 《裁判官の質問は衣里被告自身のけがへと移る》

 裁判官「あなたも事件後、あちこちに傷があったようですが、(藤家さんと)セックスをしているときにその痛みは実感していなかったのですか?」

 衣里被告「暴力されたのかどうかの記憶がないんです。セックスで(藤家さんに)起こされた時に痛みはありませんでした」

 《裁判官も考えながら質問している。その間、法廷は静まりかえる。「うーん」。衣里被告も質問から間隔をあけて答えている。事件前後の記憶を必死にたぐり寄せようとしているようにも見える。ここで裁判長が質問する》

 裁判長「弁護士から請求された証拠の中に、あなたのけがを写した写真がありました。そのけがは、その日、寝る前にできたものですか、それともその後にできたものですか」

 衣里被告「寝る前にはありませんでした」

 《裁判官から証拠書類が衣里被告に提示される。傍聴席からは見えないが、警察の捜査段階で衣里被告が書いたメモや部屋の見取り図のようだ》

 裁判長「確認ですが、セックスで起こされてから119番通報の間は、記憶がない、ということはないんですね?」

 衣里被告「はい」

 裁判長「切り傷はどういう傷でしたか?」

 衣里被告「まっすぐ一直線で、ちょっとパカっと開いていて、中が見える状態でした。でも出血はしていなかったです」

 裁判官「中身が見えたとは?」

 衣里被告「切り傷特有の肉の赤み。そういう傷でした」

 《再び裁判官の質問に戻る》

 裁判官「当日、セックスしている時、藤家さんは泣いていましたか」

 衣里被告「うーん。そこまで私も…。セックスの動きでだんだん起こされていったので…。泣いていたかどうかは分かりません」

 裁判官「セックスの中で除々に目覚めていったんですね」

 衣里被告「除々に動かされて。『彼はやっぱりセックスしたかったんだ。あー、してるんだ』と思いました。で、だんだん奮起したということですかね」

 裁判官「私からは以上です」

 《質問をする裁判官が女性に変わった》

 裁判官「(藤家さんは)後輩の方が亡くなってから落ち込んでいた、と話していましたが、それはいつのことですか?」

 衣里被告「よく覚えていないのですが、6、7年ぐらい前のような気もします」

 女性裁判官「事件当日、あなたはパスタをつくるのにフルーツナイフを使った、と言っていましたが、それは問題の果物ナイフのことですか?」

 衣里被告「はい」

 女性裁判官「使った後はしまったのですか?」

 衣里被告「私は片づけはしないので…。片づけは彼がしてくれるんです。その時はナイフもまな板もお鍋もそのままにしておいたと思います。写真(法廷で公開された事件後の現場写真)を見ると、シンクの中に入っていたので、彼が片づけてくれたものと解釈していたんですけれども」

 女性裁判官「救急車を呼んだ後の藤家さんの呼吸の状態で気付いたことはありますか?」

 衣里被告「私が声をかけた時には普通に話していましたし、特に息苦しそうな様子は見受けられませんでした」

 女性裁判官「救急車が来た後は?」

 衣里被告「救急隊の方が来て、私からは彼の表情は分からなかったので、そのときの呼吸状態もちょっと…」

 女性裁判官「今回は暴力の記憶はまったくないと」

 衣里被告「はい」

 女性裁判官「背中の傷なんですけれども、何らかの方法で刺されたものということを知ったのはいつですか?」

 衣里被告「どういうことですか?」

 《ちょっとイラついた様子を見せる衣里被告》

 女性裁判官「最初、あなたは切り傷だと思っていたのですよね。それが刺したか、刺されたかの傷と分かったのはいつですかということです」

 衣里被告「田園調布署の担当から『切り傷ではなく、刺した』と聞かされました」

=(13)に続く

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