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2008年11月12日(水) 13時09分

【元Vシネ女優2回公判ライブ】(6)「続きは後でやろうね」…被害者の最後の言葉産経新聞

 《木村衣里(えり)被告は、瞬間接着剤で藤家英樹さんの背中の切り傷を塞いだ様子を詳細に語り続けた。女性弁護人は被告人質問を続けた》

 弁護人「いつも傷の手当てに瞬間接着剤(法廷では商品名)を使っていたのですか?」

  ■写真&法廷ライブ■ 元Vシネ女優の傷害致死事件〜公判の全記録

 衣里被告「はい、そうです。彼が外科手術で医療品としても使われている。傷口がきれいに付く、といっていました。暴力の後の切り傷はいつも、瞬間接着剤で治していました」

 弁護人「その日も藤家さんの傷はくっつきましたか?」

 衣里被告「くっつきました」

 弁護人「どうして(藤家さんに)そんな傷ができたと思ったのですか?」

 衣里被告「酔っぱらって転んだのかな、と思ってました」

 弁護人「よくそういうことがあるんですか?」

 衣里被告「彼の(背中の)右側にも傷があるんですけれども、また、酔っぱらって転んだのかと…」

 弁護人「瞬間接着剤を塗った後は?」

 衣里被告「『病院に行った方がいいよ』と言ったのですが、彼が『寝てれば治る』と。彼が床の上に下半身裸で寝ようとしたので『ここでネンネすると風邪ひいちゃうよ。ベッドでネンネして』と言ったら『じゃあ、そうする。衣里も隣でネンネして』と」

 《衣里被告は藤家さんのはだけた布団をかけ直そうとして、マットに染みこんだ藤家さんの出血に気付いたという》

 弁護人「どこから出血していたのですか?」

 衣里被告「背中の切り傷からはそんなに血が出てなかったので、他のところから出血しているのかも…と思い、他の場所を探しました」

 《平成20年1月26日午前6時40分ごろ、衣里被告は救急車を呼ぶ》

 弁護人「救急車が来るまで、藤家さんは何か言っていましたか?」

 衣里被告「彼は『救急車が来たら起こしてね』と。そして『続きは後でやろうね』。『そんな場合じゃないでしょう』と言ったんですけど…。今思えば、それが彼の最後の言葉になってしまって…」

 《開廷中はほとんど身動きすることなく、背中をピンと伸ばしていた衣里被告が初めて法廷で涙を見せた。愛する人の最期がフラッシュバックしたのだろうか》

 弁護人「病院で藤家さんの死を知らされた時のあなたの気持ちは?」

 衣里被告「彼が亡くなるということが理解できなかった。医師に『私の心臓と取り替えて』といい、今、思えば悪いことを言いましたが、『こんだけ医者がいるのに、このヤブ医者!』と怒鳴り、取り乱していました」

 弁護人「病院で藤家さんのお母さんとお姉さんに会われましたね」

 衣里被告「(2人のところに)急いで走って行って、『私がついていながら申し訳ございませんでした』と謝りました。なぜ、私が彼の一命をとりとめてあげられなかったのかと…」

 《衣里被告の涙声が天井の高い法廷に響く》

 衣里被告「1回目も2回目も、私が、私の判断で救急車を呼んで、一命をとりとめたのに、なぜ3回目はとりとめられなかったのか。とにかく、私が彼についていながら…」

 《衣里被告はかつて、アルコール依存症やアルコール性肝硬変で体調を崩した藤家さんのために2度、救急車を呼んでいる。弁護人の質問は衣里被告の「記憶」に移る》

 弁護人「今までも記憶がなくなることはありましたか?」

 衣里被告「今思えばありました」

 弁護人「いつごろから記憶がなくなるようになったのですか」

 衣里被告「とぎれとぎれになったのは6、7年前から。4、5年前からは『寝ていたと思っていたのに、なぜ?』ということがあるようになりました。ここ2、3年は、すっぱり記憶がなくなっていることが多くなりました」

 弁護人「意識が戻るとどうなるのですか?」

 衣里被告「起きようと思っても起きられず、全身傷だらけでベッドにいたり、床にいたり、彼にセックスで起こされたり…」

 弁護人「気付く時間帯は」

 衣里被告「夜の時間帯。私の表現では、深夜から次の日の午前中」

 弁護人「午前中起きて、深夜に起きたことを覚えていないと」

 衣里被告「はい」

 弁護人「気付くと藤家さんは隣にいるのですか」

 衣里被告「いるときもあるし、いないときもあります」

 弁護人「覚えていない時間帯について、藤家さんから何か聞いたことはありますか」

 衣里被告「『昨日衣里に何かした?』と聞くと、彼が『酔っぱらって、衣里を殴った』と答えて、『ああ、そうなんだ』と認識しました」

 《続いて、事件の動機にも直結する「藤家さんの暴力」の内容が、衣里被告の口から明らかにされる》

 弁護人「藤家さんの暴力はどのようなものですか?」

 衣里被告「彼はケンカ慣れしている。器用なので、右も左も使える。ものすごく殴られることが多い。物で殴られることが多い。お酒の瓶、全身鏡、フライパン、警棒、杖、胡蝶蘭の鉢植え、物干し竿…。馬乗りになって首を絞められたり、床や壁にたたきつけられたり、掃除機のホースをカウボーイのように振り回し、掃除機の本体で頭を殴る、走行中の車から蹴り落とされる、ウイスキーを顔にかけられて目が見えないようにして抵抗を防ぐ、ボールのように頭や顔を蹴り上げられる…」

 《想像を絶する暴力の数々が赤裸々に語られたのだ》

=(7)に続く

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