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2008年11月11日(火) 02時27分

「先進国vs新興国 欧州vs米国」 G20 金融サミット火だね産経新聞

 サンパウロで開かれたG20は、表面的には先進国と新興国が金融危機の克服に向け団結する姿勢を示したものの、既得権を守りたい先進国と発言力拡大を狙う新興国の対立もあらわになった。先進国の中でも、市場への監視・規制の強化を主張する欧州と、自由市場主義にこだわる米国の間の溝は深い。14日からワシントンで各国首脳が集い開かれる緊急金融サミットで、対立の火だねが“炎上”すれば、市場が混乱に陥り、金融危機が再燃する懸念もある。

 「先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)は危機対応機能を果たしていない」

 議長を務めたブラジルのマンテガ財務相は会議後の記者会見で、先進国をあからさまに非難した。

 今回の議論の最大の焦点は、新興国への経済支援などを担うIMFと世銀の改革。米国発の金融危機の影響が深刻化している新興国は、有利な条件での支援などを引き出すため、権限の強化を狙った。

 これに対し、先進国は「金融危機に直面している今はIMFの本質に踏み込むときではない」(カナダのフレアティ財務相)と、早急な改革に慎重な姿勢を崩さなかった。新興国主導の支援では、政治や経済のモラルハザード(倫理観の欠如)を招くというのが、既得権を守りたい先進国の言い分だ。

 今回の会議では、これまでの急成長で存在感を増した新興国が、金融危機で地位低下に拍車がかかった新興国を押し切った。

 ただ、米国が実権を握るIMFは「作業部会を設置して1年内に結論を得るとした米国の提案を歓迎する」(ストロスカーン専務理事)としており、新興国の思惑通りに改革が進むかは不透明で、不満が鬱積(うつせき)する懸念がある。

 会議では、市場への監視・規制をめぐる欧米の対立も垣間見えた。欧州の一部の国が新興国の権限拡大を支持する姿勢を示したが、「新興国を取り込む組むことで、米国から覇権を奪う戦略」といわれている。

 対する米国も、「権威失墜を意味する国境を越えたグローバルな監視・規制機関の設置には同意しない」(金融筋)との見方が強い。

 対立の構図が鮮明となるなか、金融危機を経験した日本の役割は重要性を増しているが、主導権の発揮は期待できそうもない。

 新興国が多いアジアの代表であると同時にG7のメンバーでもあるという“またさき状態”に加え、監視・規制の強化を主張はしているが、国内議論が煮詰まっておらず、立場はあいまいだ。

 対立の火だねを抱えたまま、サミットでG20が協調して実効性のある対策を打ち出せるかは不透明だ。見せ掛けの協調が“失望売り”による株価暴落を招く懸念はぬぐえない。(坂本一之)

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