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2008年11月11日(火) 01時03分

大学生就活「氷河期」へ 売り手市場一転、内定取り消しも産経新聞

 「売り手市場」だった大学生の就活(就職活動)に「氷河期再来」の危機が迫っている。景気減速で多くの企業が新規採用を絞り込むのが確実となっているからだ。平成22年春の就職に向け、多くの大学3年生が就職活動を始める11月。キャンパスには不安を訴える声が出ている。一方、来春の就職を控えた大学4年生の中には「内定取り消し」を通告された人も相次ぎ、厚生労働省は監視強化と実態調査に乗り出した。

 ▼金融危機の余波

 10日、明治大(本部・東京都千代田区)の就職キャリア形成支援事務室に3年生たちが続々と企業研究にやってきた。こうした光景は11月に入ってから続いているという。

 「夏までは『売り手市場』といわれ心に余裕があったけど…。不況でつぶれてしまう会社も出るだろうから、簡単には志望企業を決められない」。商学部女子学生(20)は、そうため息をついた。

 再来年の入社に向けた就職活動を始めつつある3年生たちが、氷河期到来の予感を感じ始めたのは、米国で金融機関の破綻(はたん)が相次いだ9月上旬以降から。

 文科、厚労両省によると、大卒者の就職率は、氷河期がピークを迎えた平成12年3月卒業の91・1%を底に反転。戦後最長といわれる景気拡大を背景に、今年4月の卒業生は就職率96・9%を記録する売り手市場となっていた。

 しかし、今回の金融危機で、今後は企業が採用数を絞り込むのは必至。情報コミュニケーション学部の男子学生(21)は「企業に採用人数を聞いたら『減る』と言っているところもあった」と話す。

 明大の杉林宏茂・就職キャリア形成支援事務長は「世界のトヨタですら業績を下方修正している。業種で差はあれ、就職が厳しくなるのは確実」という。

 ▼厚労省が実態調査

 「現金50万円を渡され、内定がなかったことにされた」。各大学の就職部には、就職を控えた4年生の学生たちから、内定取り消しの報告が寄せられている。首都圏だけでも、日大、亜細亜大、大東文化大、明星大…。いずれも件数は少ないというが、売り手市場だった近年では見られない光景だ。

 やはり、米国発の金融危機の影響で、各大学の就職部では「幸いにも時期が早いので、再度の就職活動をサポートすることに力を注いでいる」という。

 就職斡旋(あっせん)機関「いい就職プラザ」を運営するブラッシュアップ・ジャパンによると、内定取り消しは不動産関連企業で目立つという。秋庭洋社長(41)は「この調子だと例年の4〜5倍にまで増えそう。金融不安が日本の大学生の就職戦線に大きな影響を与えている」。

 学生の人生設計を狂わしかねない事態に、厚労省は内定取り消しの実態調査を全国のハローワークに指示。「企業の都合で一方的に内定が取り消された場合は、企業への指導も可能なので、相談してほしい」と呼びかけている。

 ▼非常事態宣言も

 文科省の調査によると、就職活動の開始時期は近年、早まる一方。現在の4年生は、27%が3年生だった11〜12月中に就職活動を始めている。多くの企業も、年末から年明けにかけて採用人数を詰める。

 就職情報誌を発行するリクルートの広報部では、「一斉に採用凍結となった就職氷河期のようにはならないだろうが、採用数を減らす潮目になるだろう」と分析する。ここ数年の大量採用によって、若手社員数に充足感があることも採用を減らす原因になるという。

 氷河期到来に危機感を募らせている大学の中には“非常事態宣言”をして、学生の奮起を促すところも出てきた。

 武蔵大(東京都練馬区)は年内に3年生全員を集め、学長が訓示を行う予定だ。同大では初めての試み。また、「就職活動の準備を早めにするよう学生に呼びかけている」(担当者)という。ひたひたと足音が聞こえてくる氷河期到来に、学生は厳しい就活を強いられそうだ。

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http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081111-00000501-san-soci