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2008年11月11日(火) 13時04分

【元Vシネ女優初公判】冒頭陳述(3完)「被告人には完全責任能力があった」産経新聞

 ○被告人は被害者の背中を突き刺しており、被害者の自傷行為ではありません。この事実は、以下の(1)(2)の各事実により立証します。

 (1)被害者の背中の刺し傷は、他者から刺されたと考えるのが最も自然な位置、形状であります。この傷は、左肩申骨直下にあるし開創で、皮膚面は1直線で水平方向、創洞は前方やや内方に向かっており、被害者の自傷によるのは困難です。したがって他者から刺されたと考えるのが最も自然な位置、形状(きれいさ)であります。

 (2)被害者の背中の刺し傷の状態から、被害者は刺された際、じっとして動いていなかったと推定されます。この傷は、傷口に乱れがない直線状の傷です。創洞内の周辺組織挫滅がなく、刃物の角度も変わっておらず、刃物を刺した時と抜いた時の方向がほぼ同じであり、被害者は刺された際、じっとして動いていなかったと推定されます。

 以上の事実から、本件が被害者の自傷行為ではなく、被告人が刺したことを明らかにしました。

 さらに、以下の(3)(4)の各事実を立証することで、本件が被害者の自傷行為ではないことをより一層明らかにいたします。

 (3)被害者は被害当時、軽度から中等度の酩酊状態でありました。

 被害者の司法解剖時の血中アルコール濃度は、1・8ミリグラムで、日本酒に換算すると4合程度飲んだ状態で、刃物を刺した時と抜いた時の方向がほぼ同じになるような正確な動作を自分自身で行うのは困難な状態でありました。

 (4)刺された際、被害者は左腕を後方に回すような姿勢を採っていなかったと推定されます。

 被害者のジャンパーの刃物が刺さった痕跡は、ほぼ水平方向で一直線、長さ約2センチであるのに対し、本件果物ナイフの刃の幅は最大約2・1センチであり、両者の形状は符合しています。このことから、被害者が刺された際、ジャンパーには左腕を後方に回して大きなしわができたり、左肩側が上がるなどの乱れはなかったと推定されます。

 そして、被告人が被害者を刺したと考えて矛盾がない事実として、以下の事実も立証いたします。

 (5)既に述べたとおり、本件果物ナイフの柄から、被告人のDNA型と一致するDNA型が検出されました。

 (6)被告人には被害者を刺す動機があります。

 被告人は、いわゆるSM嗜好があり、お互いを傷つけた後、性行為に及んでいました。本件犯行も、SMプレーの行き過ぎによる犯行と認められ、被告人が被害者を刺す動機は十分認められます。

 以上の事実から、被告人が、本件果物ナイフをしっかりと手に持ち、その刃先をジャンパーを着たままじっとしていた被害者の背中に向けて、まっすぐ1回突き出して刺し、突き刺した方向と同じ方向でナイフを抜いたと認められることを立証します。

 そして、以上の事実は、鑑定にあたった教授から事情聴取した結果をまとめた捜査報告書、教授の証言、被害者のジャンパーの刃物が刺さった痕跡の形状等により立証します。

 ○被告人の突き刺し行為と被害者の死亡結果との問に因果関係が認められます。この事実は、以下の各事実により立証します。

 まず、被害者の背中の刺し傷は、広背筋と左第8肋間を突き抜け、左肺下葉を貰通する深さ約6センチの創でありました。

 この創傷は、大きな血管を傷つけていなかったため、通常人であれば自然に止血する可能性の高い傷でありました。しかし、被害者が肝硬変末期で、血液を凝固させる働きがある血小板数が極端に減少しており、止血しにくい状態にあったため、この症状が出血を助長し、被害者は失血性ショックにより死亡しました。

 以上の事実から、危険性の高い被告人の突き刺し行為と被害者の既往症があいまって被害者が死亡したこと、つまり最高裁判例に照らせば、当然に因果関係が認められます。

 そして、以上の事実は、鑑定にあたった教授から聴取した内容をまとめた報告書などにより立証しております。

 ○被告人に完全責任能力があったことについては、以下の各事実により立証します。

 被告人には責任能力に影響を及ぼすような精神障害はありませんでした。

 被告人は、衝動型の情緒不安定性パーソナリティ障害、性嗜好障害と診断されますが、いずれも責任能力に影響を及ぼすような精神障害ではありません。

 なお、衝動型の情緒不安定性パーソナリティ障害とは、非常に不安定な感情や気分、行動などによって特徴づけられます。気分変動がよくみられ、依存心と敵意の両方を感じているため、対人関係が不安定であります。また、性嗜好障害とは、自分または相手の苦痛や恥辱などに関する強烈な性的興奮の空想、性的衝動、行動の反復であります。

 そのほか、被告人には犯行当時、幻聴などの病的体験に支配されていたこともなく、責任能力に影響を及ぼすような精神障害はありませんでした。

 犯行当時についても被告人に意識障害はありませんでした。既に述べたとおり、被害者の背中の刺し傷は、その傷口に乱れがなく、刃物を刺した時と抜いた時の方向がほぼ同じです。つまり、意識がしっかりしていないと、到底できない傷であれます。

 本件は、SMプレーの行き過ぎによる犯行と認められ、被告人の意思に基づいた行為として、了解可能な行為であります。

 被告人は、犯行後、自ら119番通報するなど、自分の意思に基づいて危険回避行動を採っています。

 以上の事実から、犯行当時の被告人の責任能力に何ら問題がないことを明らかにしました。そして、以上の事実は、被告人の精神診断を行った医師の証言などにより立証しております。

 ○情状関係ですが、被告人及び被害者の身上経歴並びに被害者の遣族が被告人に対して厳重処罰を希望していることなどの情状について、被告人の供述、遺族の供述などにより立証します。

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